人間には個体差があるという話


・【02 トモダチ】


 教室に戻ってもチャイムはまだなので、適当に誰かに話し掛けることにした。
 こういう時はやっぱ坂井に話し掛けるのがいいな。八方美人のカスだから俺とも普通に喋るだろ。
 坂井は席に着いていて、周りの席の連中と喋っていたけども、しょうもな連中なので、ぶった切るように話し掛けた。
「坂井、俺いない時に何か面白いことあった?」
「い、いや、別にぃー」
 と語尾を上げた。気持ちが悪い。チャラい女子じゃないんだから、そんな言い方を男がするなよ。
 まあいいや、
「隠すなよ、何かあったんじゃねぇの?」
「全然何も無いよっ」
 と言いながら、立ち上がってどっかへ行こうとしたので、俺は腹が立って、肩パンしてやることにした。
「逃げんなよ」
「イタッ、別に逃げたわけじゃないよ」
「もう授業始まるぞ、校舎裏でタバコ吸うのかよ」
「そんなことするわけないじゃん、バカじゃないんだから」
 一瞬莉愛のほうをチラリと見ると、陰キャみたいに机に突っ伏していた。机で胸を潰して、やっぱデカいよなと思って、内心舌なめずりした。いやまずはこっちだ。
「坂井さ、あんま調子乗んなよ。ただの八方美人なんだからさ」
 その言葉に周りにいた女子が笑った。ウケるの気持ち良いー。もっと言ってやるか。
「おい坂井! 八方美人なんだから誰にでもペコペコしてろよ! そういう世界線でやって来ただろ!」
 とデカい声で言うと、周辺がドッとウケた。さすがに坂井とさっきまで喋っていたおもんな連中は笑っていないけども。
 まあとにかく、
「ほらウケた。ウケたということはみんな思っていたということだから。坂井は八方美人で確定演出だろ」
 坂井はばつが悪そうに教室から出て行って、このクラス、バックレ多いなぁ、と思った。俺はまあ正当な理由があってのことだけどな。
 すると、いつも一匹狼というか、単純に友達がいないだけのヤンキーから「いいじゃん」って言われたんだけども、うるせぇ、キモイと思った。
 とは言え、まあ”いいじゃん”と言われたことだけは気持ち良かったけどな。だって絶対俺のソレは最高に良かったんだから。
 チャイムが鳴り、授業が始まり、俺は窓際の席から廊下側の莉愛を見る。まあ正直可愛いよな。ヤレるんだったらヤリたいタイプ。身長も高くて大人っぽいし。チビはしょんべんガキだから嫌なんだよね。隣に置いても、ちゃんと俺の身長と合う女がいい。多分胸に晒し巻いて胸の大きさ隠しているんだろうけども、午後になるにつれてその巨乳が露わになっているし。毎日、朝と比べて午後にはあからさまにデカくなっているから、そういうことだろ。つまり今見えている分よりもデカいということじゃね? 俺賢い、思考を巡らせることを当然のようにしているから賢いのだ。
 ずっと莉愛の横顔を見ているだけで国語の授業は終わってしまった。あとは帰りのホームルーム……の前にもう、やっぱ告白ナシで、抱いてハメ撮りしようと思って、LIMEで連絡を入れた。
 俺はちゃんと陽キャやっているので、クラスメイト全員のLIMEは登録してあるので、すぐに連絡が出来る。
『花田に告るのナシ やっぱ抱かせろ』
 一瞬こっちを見た莉愛の顔が本当に軽蔑って感じで興奮した。これを好き勝手に出来るのデカいな、と思ったその時だった。
 写真付きでメッセージが返ってきた。
『もう告白したけども 連絡待ち』
 写真は花田とのLIME画面でどうやらこの返信の早さ的に本当っぽい。加工する時間、さすがに無い早さだから。
 というか何で花田のLIMEなんて知ってんの? 陰キャのクラスメイトのLIMEは知らなくてもいいって法律だろうよ。
 本当に優等生してんだな。上辺だけの。タバコ人間のくせに。
 まあさすがにこれは男に二言は無いので、既読スルーしておくことにした。
 帰りのホームルームは、そういう道徳の授業をした直後のはずなのに淡泊に終わった。やっぱ真面目に解決する気、担任も無いんだろうな。
 じゃ俺は部活で無双しますかと思って、通学用バッグを持って立ち上がると、さっきのヤンキーから、
「今日一緒に遊ぼうぜ」
 とか誘ってきて、キモ過ぎると思いつつ、
「俺、部活あるから遊ばねぇよ」
 と普通に断ると、睨んできたと思ったら、いきなり俺の腹を殴ってきて、
「嫌われ者が口応えしてんじゃねぇよ、調子に乗るな」
 と意味不明なことを言ってきたので、俺もカッとなり、そのまま腹を殴り返して、
「俺のどこが嫌われ者だよ、オマエのほうだろ、本当に気持ち悪いんだよ」
 と言ってから、つか言いながら、まずはスネを蹴って、怯んだところで、喉仏にハイキックをかました。咳き込んだところを吹き飛ばすように、押し込むように鳩尾を蹴り、尻もちをつかせた。
 野次馬からは賞賛された。が、影が薄くて気付かなかったけども、まだ教室にいた担任に詰められて、そのまま部活の時間は飛んでしまった。
 なんやかんやあり、簡単に言えば、サッカー部退部をその日のうちに言い渡された。あのクソ担任、事を荒立てるだけ荒立てて、部活の顧問にまで報告してしまったのだ。本当に仕事が出来ない教師だ。
 まだ部員はグラウンドで部活中だから誰もいない部室にて、顧問が見る前で自分の荷物の片付けをさせられた。
 これじゃ俺のハメ撮りコレクションのアルバムを持って帰れないじゃん、と思いつつ、でもまあそれはサッカー部に代々伝わるエロアルバムになれ、と思いながら持って帰ることを諦めた。
 サッカー部のエースだった俺はあっという間に帰宅部のエースになってしまった。今後は誰よりも早く帰宅してやろうか。俺は根性あるから走ることが出来るんだよ。手を抜いて生きている連中と違って。
 家に戻ると、未だに専業主婦の母親から、
「部活は?」
 と言われたので、ハッキリ「辞めた」と言ってやると、母親は何か焦りながら、
「何で! あんな好きだったじゃない! サッカー!」
 と唾を飛ばすくらいの勢いで言ってきてウザかったので、
「顧問と合わなかった」
 と本当のことを言ってしまった。
 すると母親が即座に、
「じゃあ地元のクラブチームに入る?」
 俺は何か今は全てが面倒なので、
「そういうのあとでいい」
 と断って自分の部屋へ戻った。このイライラは全部彼女にぶつけようと思った。未だに専業主婦の母親に社会の話をしてもしょうがないので。
 というか彼女には愚痴だけじゃなくて性欲もぶつけたい。家にあるコンドームをチェックした。まあ四枚くらいあれば大丈夫か。俺は真面目なので、ちゃんと避妊するほうだ。つか賢いので。思考を巡らせることを怠っていないので。
 サッカー部とはもうこれっきりなわけだが、さすがにこのまま傍若無人の限りを尽くされた状態で終わるのも嫌なので、一発やり返すことにした。
 俺は裏垢のスレッドで、告発を書き込んだ。勿論鍵垢ではない。鍵垢にするヤツはシンプルに陰キャのカスなので。
『キモいヤンキーに正当防衛しただけでサッカー部辞めさせられた
 ヤンキーが弱過ぎて病院送りになってしまったからだ
 こんなことで退部って終わってる
 俺はサッカー部のエースだったのに
 教育終わった瞬間』
 俺のスレッドでの呟きはなんとバズっていった。最初は俺を肯定するコメントがいっぱいで、気持ち良かったのだが、いいねが千を越えたあたりから、雲行きが怪しくなってきた。どんどん俺を否定するようなコメントがついていき、つい『SNSでしか喋れない陰キャが調子に乗んな』と返信してしまうと、炎上状態になってしまった。
 さらに何故か俺の個人情報がどんどんネットに晒されていき、俺の名前は当たり前のように出て、通っている高校とかも晒されてしまい、陰キャはキモかった。どうせロリコンのくせに。本当にキモい。
 キモいというか普通に犯罪だし。そんな簡単に犯罪者に成り下がれるの、全くもって意味が分からない。
 結局、次の日の早朝に職員室に呼び出されて、そこで二週間の謹慎を言い渡されて、自宅待機しないといけなくなってしまった。
 そのことが両親にも伝達されたわけだが、母親は泣くだけで使い物にならないし、父親は「ちゃんと考えろ」しか言わなくて、オマエのほうこそ何も考えていないなら何も言うなよ、と思った。
 とは言え、自宅待機と言われて自宅待機するのは陰キャのすることなので、俺は彼女と会って、セックスしまくろうと思った。こういう時こそセックスだろ。セックスの有用性は女に腹いせをぶつけること。