・
・【19 子供たち】
・
ちょっと引っ掻きまわしてみるか、
「おい男子たち。別にお姉さんだと思わなければ、お姉さんじゃないって言ってもいいんだぞ」
すると男子三人のなかで一番大人っぽい・メガネの男子が、
「言ってもしょうがないので」
と言うと、女子が、
「あなたたちはわたしがいないと何も出来ないんだから!」
と言えば、そのメガネの男子が、
「別に何もしないだろ」
と冷めた声で答えた。つまりこの女子の言動にはもう呆れているというわけか。それならもうこれ以上言ってもしょうがないな。面倒な女子って俺も嫌いだし。
ふと、一郎と小山のほうを見ると、カウンター席から見える厨房に、もう立っていた。
俺は二人へ、
「もう料理始めるのか?」
一郎が、
「そうですね。僕たちは夕方までしか居られないので、夜の分の作り置きもしないといけないので」
「いやあの夫婦だって何か作れるでしょ」
一郎は口ごもったところで小山が、
「作れない。レトルトをレンジ加熱しか出来ない」
と答えて、それはさすがにと思って、
「あんまさ。子供たちもいるんだから、大人を下げ過ぎるのも良くないぞ」
と言ったら、メガネの男子が、
「本当です。だから僕は花田さんや小山さんにボランティアで入ってもらって、すごく感謝しているんです。正直手料理なんて食べたの、初めてです」
すると他の坊主の男子も、
「うん、それそれ。花田さんの料理は本当に、芯から温かいんだ」
明らかに生意気そうな、サイドを刈り上げて、襟足の長いヤンキーの子供みたいな男子も、
「おれは花田のことやると思ってるけど、アンタは何か出来んの?」
と俺のほうを少し見下すように言ってきたので、ここはちょっと最初にカマしてやるか。
「まあ勉強担当かな。一応俺、頭良いほうだから」
多分年齢差はあれど、ここにいるのは全員小学生っぽいので、さすがに小学生の問題なら分かる。
そんなことを思っていると、ヤンキー風の男子が、
「ガネイ、何かコイツ、ミスってたことある?」
とメガネの男子のほうを向くと、メガネの男子は溜息をつきながら、
「子供たち、と言いましたが、子供という言葉の時点で複数名を差しているので”子供たち”は重複言葉です」
ヤンキー風の男子はハッと鼻で笑ったので、ここは大人として、しっかり言ってやることにした。
「でもそれはオマエの手柄じゃないけどな。それに気付いたこっちのガネイくん? の手柄で、オマエは何もしていないから鼻で笑う資格なんてねぇよ。オマエは俺と勉強対決しても勝てないだろうよ」
「はぁ? 何言ってくれてんの? ガネイに指摘されるようなヤツが頭良いわけないじゃん? ガネイ! 何かドリル貸せ!」
ガネイと呼ばれているメガネの男子はランドセルからドリルを取り出した。
それを奪うようにヤンキー風の男子が手に取ったので、俺はすぐさま、
「そういう受け取り方良くないだろ。ありがとうとか言えよ。オマエと俺のために出してくれたんだから。ありがとうな、ガネイくん。コイツぶっ潰すためにドリル出してくれて」
するとガネイくんは少し照れながら、
「あの、金井(かねい)です。金井亮です」
「じゃあ亮、こんな礼儀のなってないカスは俺がぶち破るから。採点任せた」
するとヤンキー風の男子は鼻で笑ってから、
「何で採点を小学生に任すんだよ! バーカ!」
「いやそんなん普通だろ。勝負には公正な審判が必要に決まってるし。そんなことも分かんない……? ちょっと、学力以前の問題だな……大丈夫か? 勝負やめるか?」
「やってやんよ! バカジジイ!」
「十七歳だわ」
そんなこんなで、亮のドリルを問題として、俺とヤンキー風の男子それぞれ紙に答えを書いていった。
三十分後、亮が採点し、
「佐野さんが全問正解、ジュエルくんがまあ半分正解、かな?」
このヤンキー風の男子、ジュエルって名前なの? キラキラネーム過ぎるだろ。
ジュエルってヤンキー風の男子は悔しそうにしながら、
「十七歳は小学生の問題が出来て当然だろ!」
「そうだよ。でもオマエは俺のことバカと言っていたじゃん。そこの整合性はどう取る気?」
「うるせぇよ! バーカ! バーカ!」
「悔しかったら勉強しろよ。オマエが満点なら引き分けにはなるんだから。それとも高校生の問題でもするか?」
「うるせぇ! 勉強なんてしねぇよ!」
「いやしろよ。俺全然教えられるけども」
「そんなんしても意味ねぇよ!」
「意味はあるよ、良い学歴を自分に付けられる。良い学歴ってのは要はトロフィーだから。トロフィーはあればあるほどいいんだよ。まず人に舐められない」
俺がそう言うと、ピタッと止まったヤンキー風の男子のジュエル。
やっぱこういうヤツは”舐められない”って言葉が好きだよな。うん、俺も好き。
「俺は頭も良くて、サッカー部では二年生エースだったよ。まあサッカーはおもんないからやめたけども。でもそのトロフィーは残る」
実際やめたらトロフィーは残りそうにないけども、まあそう言っておけばいいんだ。
ヤンキー風の男子、ジュエルは深呼吸してから、
「おれ、舐められたくない」
「ちなみに俺はオマエのこと舐めてなんていない。高校生に勝負を挑む勝気なヤツは好きだよ。気合いが違うと言っていいだろう」
「そ! そうか!」
とあからさまに嬉しそうな顔をしたヤンキー風の男子・ジュエル。やっぱヤンキー家庭なんだろうな。舐められたくないとか気合いとか、もろヤンキー用語が好き過ぎる。
ガネイくん……じゃなくて亮が俺の顔をじっと見ている。まるで何かを測っているようだ。決して品定めといった感じじゃない。俺が信用に足るかどうかを見極めているような感じだ。
じゃあここはこう言っとくか。
「一応先に宣言しておくが、俺は真っ当な人間ではないからな。どちらかと言えば悪ガキだ。その分、悪ガキの思考は分かるし、今は真面目な人間になるために修行中だ」
ここは等身大でいることが一番だ。そっちのほうがジュエル的には取っつきやすいだろうし。途中でボロが出たら、亮からの信頼が下がってしまうだろう。だから予防線は張っておく。
ジュエルは嬉しそうにしている。どうやらなついている感じがする。これはいい。結局輪を乱しそうな、ボス猿気質に好かれておくことは悪いことではない。果たして亮は、と思っていると、後ろからもう一人の声がした。あの坊主の男子だ。
「お兄ちゃんは悪い人なの?」
「全然良い人ではないな。良い人ならジュエルとドリル勝負なんてしねぇよ」
その言葉に吹き出して笑った亮。これはかなり好感触。一気に両取り出来たのはデカい。坊主の男子は見るからに人が良さそうなので、そんな激烈に人を嫌うって感じじゃない。あとはこのやり取りをずっと不満げに、こちらをチラチラ見ている女子だけども、まあそこは別に小山に任せてもいいわけだし。
坊主の男子は微笑みながら、
「お兄ちゃん面白い! 普通良い人って言うのに!」
俺はサムアップしながら、
「全然悪いほうだから。あんま子供と張り合う大人と関わるなよ。カスだから」
坊主の男子はキャッキャッと喜んだ。この場にいる男子全員から信頼を得られたのは熱いかもしれない。
そんなところで小山が、
「ちょっと料理が完成しそうだけども、早めに味見してみる?」
と声を出して、坊主の男子とヤンキー風の男子・ジュエルがワッとそっちに飛びついた。俺はメガネの男子・亮に、
「行かなくていいのか?」
と聞くと、亮は素っ気ない感じで、
「本来お金を払わないと食べられないものは頂きません」
正しいけども正しくないな。やっぱ同じ輪には入っていてもらったほうが今後管理もしやすいし。
「いいや、善意で聞かれた時は乗っかったほうが小山は気持ちが良いぞ」
亮は目を見開いた。無い発想だったらしい。俺は続ける。
「せっかくいるんだから食べたらどうだ? 一郎の料理が美味しいって知ってるんだったら食べたほうが絶対得。なんせ一郎は食べてほしくて作っているんだから」
亮は小さく頷いて、ゆっくりジュエルと坊主の男子のところへ向かった。さて、あとは、
「オマエも食べればいいじゃん。つか名前はなんていうん?」
女子はツーンとした表情で、
「教えなーい!」
と言うと、小山が厨房から出てきて、
「その子は淡島理恵(あわしま・りえ)ちゃん」
と言うと、すぐにその淡島って女子が「言うなー!」と叫んだ。一郎は盛り付けをしている。どうやら香り的にハヤシライスらしい。小皿に綺麗にご飯とハヤシライスを盛っている。ちょっとハヤシライスが多めかも。今は飲み物が無いから、飲み込みやすいためにかな。
「じゃあ淡島、一郎が全員分盛ってくれているから食べよう」
「嫌だ! 私! 花田が盛った料理は食べたくない!」
「花田が作った料理を食べているのに?」
「別に! それはシェフだからしょうがないけども、私は莉愛ちゃんが盛った料理しか食べない!」
全然整合性が無い。花田が作った料理を全部食べないなら分かるけども。女子の何か、自分の気持ちを優先するところ、本当に苦手だ。理論的じゃないというか。勿論全員が全員そうじゃないだろうけども、結構大体こんなイメージがある。
すると一郎が、
「じゃあ莉愛さん、莉愛さんが盛ってください」
と言って、莉愛さん呼びなんだって、ちょっと親戚のおじさんみたいなことを思ってしまった。
淡島の分は小山が盛って、じゃあ余った一皿は、と思ったタイミングで、
「この小皿は佐野くん、食べてください」
俺はフフッと笑ってから、
「俺がガキだからか?」
一郎は優しい笑顔で、
「そうかもしれません」
と返して、小山が笑った、と思ったら、亮もジュエルも笑っていた。
・【19 子供たち】
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ちょっと引っ掻きまわしてみるか、
「おい男子たち。別にお姉さんだと思わなければ、お姉さんじゃないって言ってもいいんだぞ」
すると男子三人のなかで一番大人っぽい・メガネの男子が、
「言ってもしょうがないので」
と言うと、女子が、
「あなたたちはわたしがいないと何も出来ないんだから!」
と言えば、そのメガネの男子が、
「別に何もしないだろ」
と冷めた声で答えた。つまりこの女子の言動にはもう呆れているというわけか。それならもうこれ以上言ってもしょうがないな。面倒な女子って俺も嫌いだし。
ふと、一郎と小山のほうを見ると、カウンター席から見える厨房に、もう立っていた。
俺は二人へ、
「もう料理始めるのか?」
一郎が、
「そうですね。僕たちは夕方までしか居られないので、夜の分の作り置きもしないといけないので」
「いやあの夫婦だって何か作れるでしょ」
一郎は口ごもったところで小山が、
「作れない。レトルトをレンジ加熱しか出来ない」
と答えて、それはさすがにと思って、
「あんまさ。子供たちもいるんだから、大人を下げ過ぎるのも良くないぞ」
と言ったら、メガネの男子が、
「本当です。だから僕は花田さんや小山さんにボランティアで入ってもらって、すごく感謝しているんです。正直手料理なんて食べたの、初めてです」
すると他の坊主の男子も、
「うん、それそれ。花田さんの料理は本当に、芯から温かいんだ」
明らかに生意気そうな、サイドを刈り上げて、襟足の長いヤンキーの子供みたいな男子も、
「おれは花田のことやると思ってるけど、アンタは何か出来んの?」
と俺のほうを少し見下すように言ってきたので、ここはちょっと最初にカマしてやるか。
「まあ勉強担当かな。一応俺、頭良いほうだから」
多分年齢差はあれど、ここにいるのは全員小学生っぽいので、さすがに小学生の問題なら分かる。
そんなことを思っていると、ヤンキー風の男子が、
「ガネイ、何かコイツ、ミスってたことある?」
とメガネの男子のほうを向くと、メガネの男子は溜息をつきながら、
「子供たち、と言いましたが、子供という言葉の時点で複数名を差しているので”子供たち”は重複言葉です」
ヤンキー風の男子はハッと鼻で笑ったので、ここは大人として、しっかり言ってやることにした。
「でもそれはオマエの手柄じゃないけどな。それに気付いたこっちのガネイくん? の手柄で、オマエは何もしていないから鼻で笑う資格なんてねぇよ。オマエは俺と勉強対決しても勝てないだろうよ」
「はぁ? 何言ってくれてんの? ガネイに指摘されるようなヤツが頭良いわけないじゃん? ガネイ! 何かドリル貸せ!」
ガネイと呼ばれているメガネの男子はランドセルからドリルを取り出した。
それを奪うようにヤンキー風の男子が手に取ったので、俺はすぐさま、
「そういう受け取り方良くないだろ。ありがとうとか言えよ。オマエと俺のために出してくれたんだから。ありがとうな、ガネイくん。コイツぶっ潰すためにドリル出してくれて」
するとガネイくんは少し照れながら、
「あの、金井(かねい)です。金井亮です」
「じゃあ亮、こんな礼儀のなってないカスは俺がぶち破るから。採点任せた」
するとヤンキー風の男子は鼻で笑ってから、
「何で採点を小学生に任すんだよ! バーカ!」
「いやそんなん普通だろ。勝負には公正な審判が必要に決まってるし。そんなことも分かんない……? ちょっと、学力以前の問題だな……大丈夫か? 勝負やめるか?」
「やってやんよ! バカジジイ!」
「十七歳だわ」
そんなこんなで、亮のドリルを問題として、俺とヤンキー風の男子それぞれ紙に答えを書いていった。
三十分後、亮が採点し、
「佐野さんが全問正解、ジュエルくんがまあ半分正解、かな?」
このヤンキー風の男子、ジュエルって名前なの? キラキラネーム過ぎるだろ。
ジュエルってヤンキー風の男子は悔しそうにしながら、
「十七歳は小学生の問題が出来て当然だろ!」
「そうだよ。でもオマエは俺のことバカと言っていたじゃん。そこの整合性はどう取る気?」
「うるせぇよ! バーカ! バーカ!」
「悔しかったら勉強しろよ。オマエが満点なら引き分けにはなるんだから。それとも高校生の問題でもするか?」
「うるせぇ! 勉強なんてしねぇよ!」
「いやしろよ。俺全然教えられるけども」
「そんなんしても意味ねぇよ!」
「意味はあるよ、良い学歴を自分に付けられる。良い学歴ってのは要はトロフィーだから。トロフィーはあればあるほどいいんだよ。まず人に舐められない」
俺がそう言うと、ピタッと止まったヤンキー風の男子のジュエル。
やっぱこういうヤツは”舐められない”って言葉が好きだよな。うん、俺も好き。
「俺は頭も良くて、サッカー部では二年生エースだったよ。まあサッカーはおもんないからやめたけども。でもそのトロフィーは残る」
実際やめたらトロフィーは残りそうにないけども、まあそう言っておけばいいんだ。
ヤンキー風の男子、ジュエルは深呼吸してから、
「おれ、舐められたくない」
「ちなみに俺はオマエのこと舐めてなんていない。高校生に勝負を挑む勝気なヤツは好きだよ。気合いが違うと言っていいだろう」
「そ! そうか!」
とあからさまに嬉しそうな顔をしたヤンキー風の男子・ジュエル。やっぱヤンキー家庭なんだろうな。舐められたくないとか気合いとか、もろヤンキー用語が好き過ぎる。
ガネイくん……じゃなくて亮が俺の顔をじっと見ている。まるで何かを測っているようだ。決して品定めといった感じじゃない。俺が信用に足るかどうかを見極めているような感じだ。
じゃあここはこう言っとくか。
「一応先に宣言しておくが、俺は真っ当な人間ではないからな。どちらかと言えば悪ガキだ。その分、悪ガキの思考は分かるし、今は真面目な人間になるために修行中だ」
ここは等身大でいることが一番だ。そっちのほうがジュエル的には取っつきやすいだろうし。途中でボロが出たら、亮からの信頼が下がってしまうだろう。だから予防線は張っておく。
ジュエルは嬉しそうにしている。どうやらなついている感じがする。これはいい。結局輪を乱しそうな、ボス猿気質に好かれておくことは悪いことではない。果たして亮は、と思っていると、後ろからもう一人の声がした。あの坊主の男子だ。
「お兄ちゃんは悪い人なの?」
「全然良い人ではないな。良い人ならジュエルとドリル勝負なんてしねぇよ」
その言葉に吹き出して笑った亮。これはかなり好感触。一気に両取り出来たのはデカい。坊主の男子は見るからに人が良さそうなので、そんな激烈に人を嫌うって感じじゃない。あとはこのやり取りをずっと不満げに、こちらをチラチラ見ている女子だけども、まあそこは別に小山に任せてもいいわけだし。
坊主の男子は微笑みながら、
「お兄ちゃん面白い! 普通良い人って言うのに!」
俺はサムアップしながら、
「全然悪いほうだから。あんま子供と張り合う大人と関わるなよ。カスだから」
坊主の男子はキャッキャッと喜んだ。この場にいる男子全員から信頼を得られたのは熱いかもしれない。
そんなところで小山が、
「ちょっと料理が完成しそうだけども、早めに味見してみる?」
と声を出して、坊主の男子とヤンキー風の男子・ジュエルがワッとそっちに飛びついた。俺はメガネの男子・亮に、
「行かなくていいのか?」
と聞くと、亮は素っ気ない感じで、
「本来お金を払わないと食べられないものは頂きません」
正しいけども正しくないな。やっぱ同じ輪には入っていてもらったほうが今後管理もしやすいし。
「いいや、善意で聞かれた時は乗っかったほうが小山は気持ちが良いぞ」
亮は目を見開いた。無い発想だったらしい。俺は続ける。
「せっかくいるんだから食べたらどうだ? 一郎の料理が美味しいって知ってるんだったら食べたほうが絶対得。なんせ一郎は食べてほしくて作っているんだから」
亮は小さく頷いて、ゆっくりジュエルと坊主の男子のところへ向かった。さて、あとは、
「オマエも食べればいいじゃん。つか名前はなんていうん?」
女子はツーンとした表情で、
「教えなーい!」
と言うと、小山が厨房から出てきて、
「その子は淡島理恵(あわしま・りえ)ちゃん」
と言うと、すぐにその淡島って女子が「言うなー!」と叫んだ。一郎は盛り付けをしている。どうやら香り的にハヤシライスらしい。小皿に綺麗にご飯とハヤシライスを盛っている。ちょっとハヤシライスが多めかも。今は飲み物が無いから、飲み込みやすいためにかな。
「じゃあ淡島、一郎が全員分盛ってくれているから食べよう」
「嫌だ! 私! 花田が盛った料理は食べたくない!」
「花田が作った料理を食べているのに?」
「別に! それはシェフだからしょうがないけども、私は莉愛ちゃんが盛った料理しか食べない!」
全然整合性が無い。花田が作った料理を全部食べないなら分かるけども。女子の何か、自分の気持ちを優先するところ、本当に苦手だ。理論的じゃないというか。勿論全員が全員そうじゃないだろうけども、結構大体こんなイメージがある。
すると一郎が、
「じゃあ莉愛さん、莉愛さんが盛ってください」
と言って、莉愛さん呼びなんだって、ちょっと親戚のおじさんみたいなことを思ってしまった。
淡島の分は小山が盛って、じゃあ余った一皿は、と思ったタイミングで、
「この小皿は佐野くん、食べてください」
俺はフフッと笑ってから、
「俺がガキだからか?」
一郎は優しい笑顔で、
「そうかもしれません」
と返して、小山が笑った、と思ったら、亮もジュエルも笑っていた。



