香津世と矢紗史の手紙のやり取りは依然続いていました。ただ、香津世が仕事で忙しく、あまり手紙を出さなかったため、矢紗史が心配しているようでした。これは、そんな時の矢紗史からの手紙から抜粋したものです。
香っちゃん、元気? 最近、手紙が来ないのでどうしたのかなと思ってるんだ。ぼくは、とりあえず元気だよ。でも、いつも香っちゃんに会いたいと思ってる。ぼくは、相変わらず魚屋で働いている。香っちゃんに家庭教師をしてもらったので、何とか仕入れの仕事も出来るようになった。当然、まだ簡単ではないし、間違いもするけど、店主は段々とぼくに任せてくれるようになってきた。
香っちゃんの知っている弟子たちはもう誰もいなくなってしまったよ。それで、ぼくが店主の次、一番の経験者になった。信じられる? それで、後輩の弟子たちに指導しなくてはならない時もあるんだ。中には、香っちゃんほどではなくても、のみこみの早い弟子もいる。中には、ぼくのように物分かりの悪い弟子もいる。でも、人それぞれだから、仕方ないよね。
もう遠くに離れてしまっているし、次に会えるのはいつか分からないから、言わせてね。香っちゃんは、ぼくの永遠のあこがれの人だよ。いつまでも見守っているから、頑張ってね。
矢紗史の手紙を読んで、香津世は複雑な気持ちになりました。これって、ラブレターだよね。前から、矢っちゃんがわたしのことを友達以上に好きな事は分かっていたけど、ここまではっきりと言ったことはなかった。わたしは矢っちゃんが唯一の友達と思っているし、今も、無性に会いたい。でも、どうしても恋人とは思えない。それは、わたしが、自分の方が優秀だと自惚れているせいだろうか。もし矢っちゃんのような人と一緒になったら、足でまといになるとさえ思っているのかもしれない。それは失礼極まりないし、思い上がりだよね。一体わたしが惚れるような男性っているのかなぁ?
それに、この優越感と言うのはよく見え隠れする怪物だ。アメリカでは自慢することは良いことになっている。むしろ、自分の長所をはっきり言えないのは欠点と見做される。でも、アメリカ人の自慢話を聞いていると醜いと思うことさえある。それに対して日本では自慢をするのは恥ずかしいことなはずだ。
それでも、実は、日本人だって自尊心のない人はいない。それで、どうやら、回りくどい仕方で自慢をすることが多いんじゃないかな。それは、それで、ちゃんちゃら可笑しい。そんな中で、矢っちゃんだけは違うような気がする。どうして自慢しなくて済むんだろう? プライドがない? あるいは、わたし、何か見落としている?
兎に角、わたしの負けず嫌いは否定できない。でも、時には、それは人との比較じゃなくて、自分自身との比較、つまり、向上心ではないかとも思うこともある。その方が、健全なような気がするし。いずれにしても、わたしは、わたしの路を行かないと。着物と包丁さばきでだいぶ有名になったけど、他にも何か出来ることがあるはずだ。わたしは、絶対に勝ち抜くんだ!
香っちゃん、元気? 最近、手紙が来ないのでどうしたのかなと思ってるんだ。ぼくは、とりあえず元気だよ。でも、いつも香っちゃんに会いたいと思ってる。ぼくは、相変わらず魚屋で働いている。香っちゃんに家庭教師をしてもらったので、何とか仕入れの仕事も出来るようになった。当然、まだ簡単ではないし、間違いもするけど、店主は段々とぼくに任せてくれるようになってきた。
香っちゃんの知っている弟子たちはもう誰もいなくなってしまったよ。それで、ぼくが店主の次、一番の経験者になった。信じられる? それで、後輩の弟子たちに指導しなくてはならない時もあるんだ。中には、香っちゃんほどではなくても、のみこみの早い弟子もいる。中には、ぼくのように物分かりの悪い弟子もいる。でも、人それぞれだから、仕方ないよね。
もう遠くに離れてしまっているし、次に会えるのはいつか分からないから、言わせてね。香っちゃんは、ぼくの永遠のあこがれの人だよ。いつまでも見守っているから、頑張ってね。
矢紗史の手紙を読んで、香津世は複雑な気持ちになりました。これって、ラブレターだよね。前から、矢っちゃんがわたしのことを友達以上に好きな事は分かっていたけど、ここまではっきりと言ったことはなかった。わたしは矢っちゃんが唯一の友達と思っているし、今も、無性に会いたい。でも、どうしても恋人とは思えない。それは、わたしが、自分の方が優秀だと自惚れているせいだろうか。もし矢っちゃんのような人と一緒になったら、足でまといになるとさえ思っているのかもしれない。それは失礼極まりないし、思い上がりだよね。一体わたしが惚れるような男性っているのかなぁ?
それに、この優越感と言うのはよく見え隠れする怪物だ。アメリカでは自慢することは良いことになっている。むしろ、自分の長所をはっきり言えないのは欠点と見做される。でも、アメリカ人の自慢話を聞いていると醜いと思うことさえある。それに対して日本では自慢をするのは恥ずかしいことなはずだ。
それでも、実は、日本人だって自尊心のない人はいない。それで、どうやら、回りくどい仕方で自慢をすることが多いんじゃないかな。それは、それで、ちゃんちゃら可笑しい。そんな中で、矢っちゃんだけは違うような気がする。どうして自慢しなくて済むんだろう? プライドがない? あるいは、わたし、何か見落としている?
兎に角、わたしの負けず嫌いは否定できない。でも、時には、それは人との比較じゃなくて、自分自身との比較、つまり、向上心ではないかとも思うこともある。その方が、健全なような気がするし。いずれにしても、わたしは、わたしの路を行かないと。着物と包丁さばきでだいぶ有名になったけど、他にも何か出来ることがあるはずだ。わたしは、絶対に勝ち抜くんだ!

