香津世にとって、この寿司店での仕事は自分の能力を発揮する良い機会となりました。ただ、そこでは、色々な意味で競争が厳しく、あの魚屋での和気あいあいとした環境が懐かしく思われました。特に、弟分の矢紗史の事を懐かしく思っていました。その頃、香津世の週一日の休みの日は不規則に変化し、依然魚屋で働く矢紗史の休みとは、なかなか合わず、簡単に会うことが出来なくなっていたのです。
寿司店に移ってだいぶ経ってから、香津世は、ようやく矢紗史と会いました。二人にとっては同窓会のような気分で、話が弾みました。
「矢っちゃん、こんなに背が高かったけ?」
「やだな~。香っちゃんが寿司店に移った頃には今と同じくらいだったよ。確かに、ぼくは、おくてで、魚屋に勤めてから随分背が伸びたけどね。それにしても、知ってる? 香っちゃんが寿司店に移ってから、ぼくが店主と仕入れに行くようになったんだよ」
「へ~、凄いじゃない!」
「だけど、これが大変で、ぼくには難しすぎるんだよ。香っちゃんは、ほんとに優秀だったということが良く分かるよ」
それを聞いて、香津世は気の毒になりました。仕入れは香津世にとっては頭を使い、やりがいのある仕事でした。ところが、確かに、この矢紗史には難しすぎることが良く分かるのです。それでも、店主が矢紗史を選んだのには訳があるはずだと思いました。ひょっとしたら、店主は、この誠実な矢っちゃんを後継ぎにしようと考えているのかな? と言う憶測さえしました。それで、出来るだけ矢紗史の手助けをしようと思ったのです。
まず、香津世は、矢紗史が何を難しいと感じているのか探りました。そして、分かったことは、矢紗史は基本的な金銭感覚と数字に鈍いということでした。いくらで仕入れたものをいくらで売ったらどんな利益が出るか、そして、仕入れた物が売れる可能性はどうなのかと言ったようなことです。それで、具体的な例を使って、必要な事柄が分かる様に手伝ったのです。同じことを何回も何回も繰り返さなければなりませんでした。そんな訳で、たまに会う時は、香津世が仕入れ作業の家庭教師をするような具合になってしまいました。
それから暫くしてまた二人が会った時、矢紗史は少し興奮した様子で香津世に話しました。
「香っちゃん! 分かってきたよ! この前教えてもらったことを思い出しながら、仕事をしたら、店主が褒めてくれたよ!」
「良かったじゃない」
「うん。ありがとう。それで~、もっと、もっと教えてもらえないかなぁ」
「矢っちゃん! 背は随分高くなったけど......、やっぱり弟臭いな。でも、この調子で、覚えれば、きっと仕入れのベテランになれるね」
その後、香津世は矢紗史に仕入れ時のノートの取り方とか、香津世が一人で身につけてきた手法を伝授しました。それで、矢紗史もなんとか仕入れの基本が分かってきたようです。そして、香津世と矢紗史はお互いの休みの日を調べて、その後の家庭教師の予定を立てました。しかし、世の中、予定は未定とは良く言ったものです。
寿司店に移ってだいぶ経ってから、香津世は、ようやく矢紗史と会いました。二人にとっては同窓会のような気分で、話が弾みました。
「矢っちゃん、こんなに背が高かったけ?」
「やだな~。香っちゃんが寿司店に移った頃には今と同じくらいだったよ。確かに、ぼくは、おくてで、魚屋に勤めてから随分背が伸びたけどね。それにしても、知ってる? 香っちゃんが寿司店に移ってから、ぼくが店主と仕入れに行くようになったんだよ」
「へ~、凄いじゃない!」
「だけど、これが大変で、ぼくには難しすぎるんだよ。香っちゃんは、ほんとに優秀だったということが良く分かるよ」
それを聞いて、香津世は気の毒になりました。仕入れは香津世にとっては頭を使い、やりがいのある仕事でした。ところが、確かに、この矢紗史には難しすぎることが良く分かるのです。それでも、店主が矢紗史を選んだのには訳があるはずだと思いました。ひょっとしたら、店主は、この誠実な矢っちゃんを後継ぎにしようと考えているのかな? と言う憶測さえしました。それで、出来るだけ矢紗史の手助けをしようと思ったのです。
まず、香津世は、矢紗史が何を難しいと感じているのか探りました。そして、分かったことは、矢紗史は基本的な金銭感覚と数字に鈍いということでした。いくらで仕入れたものをいくらで売ったらどんな利益が出るか、そして、仕入れた物が売れる可能性はどうなのかと言ったようなことです。それで、具体的な例を使って、必要な事柄が分かる様に手伝ったのです。同じことを何回も何回も繰り返さなければなりませんでした。そんな訳で、たまに会う時は、香津世が仕入れ作業の家庭教師をするような具合になってしまいました。
それから暫くしてまた二人が会った時、矢紗史は少し興奮した様子で香津世に話しました。
「香っちゃん! 分かってきたよ! この前教えてもらったことを思い出しながら、仕事をしたら、店主が褒めてくれたよ!」
「良かったじゃない」
「うん。ありがとう。それで~、もっと、もっと教えてもらえないかなぁ」
「矢っちゃん! 背は随分高くなったけど......、やっぱり弟臭いな。でも、この調子で、覚えれば、きっと仕入れのベテランになれるね」
その後、香津世は矢紗史に仕入れ時のノートの取り方とか、香津世が一人で身につけてきた手法を伝授しました。それで、矢紗史もなんとか仕入れの基本が分かってきたようです。そして、香津世と矢紗史はお互いの休みの日を調べて、その後の家庭教師の予定を立てました。しかし、世の中、予定は未定とは良く言ったものです。

