「香っちゃん、着いたよ」
矢紗史の声で目を覚ました時、香津世は、なんだか違う世界にいるような気がしました。乗っているバスは古臭いし、矢紗史は背の低い、魚屋時代の矢紗史なのです。唖然としたのですが、兎に角、二人はバスを降りないとなりませんでした。そこで腕時計を見た時に、香津世は自分の手にしわがなく若々しいことに気が付きました。
そして、着ている服はと言えば、魚屋時代のものでした。香津世は混乱し始めました。
「矢っちゃん、これ、夢?」
「香っちゃん、何言ってんの? まだ寝ぼけているの? さぁ、家まで送って行くよ。明日も朝から魚屋の仕事だよ」
香津世はまだ夢の中にいるのかと思い、試しに自分の手をつねってみました。
「いてっ! 夢じゃない!! えー!!!」
その途端に、香津世の頭の中が急回転を始めました。すると、二つに一つ。実際に一生の体験をした後に、時間交差のせいで、過去に戻った~? あの映画じゃあるまいし、非現実的だ。それじゃ、バスで寝入ってしまった間に一生分の夢を見た~? クリスマス・キャロルみたいにー? でも、そうだとすると、あの夢、あまりにリアルで、夢らしい支離滅裂な感じがない。それに、行ったこともないニューヨークや、全く知らないはずのオットー、志津香さん、子供達や、孫も? そして、世界金融危機やあの映画の内容まで? それらが、全部、夢の中の創造だったなんて......、あり得ない! えーい!! ......いったい、どうなってんの?
香津世はまだ何も納得した訳ではありませんでしたが、一息ついて、考え直し始めました。いずれにしても、自分の人生の一つの可能性を垣間見たことには間違いない。そして、今、その、将来の予告編を基に、わたしは自分の未来を創り出せるんだ。でも、あの映画じゃないけど、この予告編、すぐに忘れてしまうかもしれない。じゃないと矛盾が起こるかもしれないし。
だから、忘れる前に、よく考えなくては。今が大事な時だ。まず......、わたしの勝気な性分。これに、いったいどんな価値があったのだろうか? いや、あるのだろうか? それから、矢っちゃんとの友情はどうだろう? そして......、生き甲斐とは何だろう? 兎に角、今現在、つまり、まだ魚屋時代のわたしにとって、これまで考えもしなかったような、重大な選択肢が存在するということだけは分かった。どうしよう。どうしよう......。
あっけに取られている様子の、まだ背の低い矢紗史を前に、香津世は必死に考えを巡らせていました。
矢紗史の声で目を覚ました時、香津世は、なんだか違う世界にいるような気がしました。乗っているバスは古臭いし、矢紗史は背の低い、魚屋時代の矢紗史なのです。唖然としたのですが、兎に角、二人はバスを降りないとなりませんでした。そこで腕時計を見た時に、香津世は自分の手にしわがなく若々しいことに気が付きました。
そして、着ている服はと言えば、魚屋時代のものでした。香津世は混乱し始めました。
「矢っちゃん、これ、夢?」
「香っちゃん、何言ってんの? まだ寝ぼけているの? さぁ、家まで送って行くよ。明日も朝から魚屋の仕事だよ」
香津世はまだ夢の中にいるのかと思い、試しに自分の手をつねってみました。
「いてっ! 夢じゃない!! えー!!!」
その途端に、香津世の頭の中が急回転を始めました。すると、二つに一つ。実際に一生の体験をした後に、時間交差のせいで、過去に戻った~? あの映画じゃあるまいし、非現実的だ。それじゃ、バスで寝入ってしまった間に一生分の夢を見た~? クリスマス・キャロルみたいにー? でも、そうだとすると、あの夢、あまりにリアルで、夢らしい支離滅裂な感じがない。それに、行ったこともないニューヨークや、全く知らないはずのオットー、志津香さん、子供達や、孫も? そして、世界金融危機やあの映画の内容まで? それらが、全部、夢の中の創造だったなんて......、あり得ない! えーい!! ......いったい、どうなってんの?
香津世はまだ何も納得した訳ではありませんでしたが、一息ついて、考え直し始めました。いずれにしても、自分の人生の一つの可能性を垣間見たことには間違いない。そして、今、その、将来の予告編を基に、わたしは自分の未来を創り出せるんだ。でも、あの映画じゃないけど、この予告編、すぐに忘れてしまうかもしれない。じゃないと矛盾が起こるかもしれないし。
だから、忘れる前に、よく考えなくては。今が大事な時だ。まず......、わたしの勝気な性分。これに、いったいどんな価値があったのだろうか? いや、あるのだろうか? それから、矢っちゃんとの友情はどうだろう? そして......、生き甲斐とは何だろう? 兎に角、今現在、つまり、まだ魚屋時代のわたしにとって、これまで考えもしなかったような、重大な選択肢が存在するということだけは分かった。どうしよう。どうしよう......。
あっけに取られている様子の、まだ背の低い矢紗史を前に、香津世は必死に考えを巡らせていました。

