日常
「心桜ちゃん、ここの解き方教えてー」
その甘えるような助けが自分に向けられたことを認識し、目の前に座る森野鈴華に視線を向けた。
心桜は今、難問をといている真っ最中である。
「ああ、連立方程式ね。それならxかyが同じ係数、えっと、前の数が同じになってないか見て」
鈴華は陽キャ特有の上っ面だけ明るくしたような、中身の薄いオーバーリアクションで口を尖らせる。
「むむむぅ~?そろってないなぁ」
「それなら、前の数を分数の通分みたいに揃えられないか考えてみて。」
「『ツーブン』って何?え〜、わからないよぉ」
式にたどり着くまでが難しい上に計算が複雑な問題を中断させられ、内心イラッとする。
しばらくして。
「わあ、解けたよ!ありがとう心桜ちゃん」
嬉しそうに口角を上げる鈴華。
式にたどり着くまでが難しい上に計算が複雑な問題を中断させられ、内心イライラしているが、悟られないように心桜は微笑む。
佐倉心桜は優等生として生きている。何故なら、中学校というトゲトゲチクチクとした社会で生き抜くためである。簡単に言えば、「優等生」というラベルが貼られればでいじりやいじめの類いを受けにくいということだ。
しかし、ただただ優等生をしているだけでは真面目と等しく裏で何かを言われてしまう。孤立する可能性も高い。なので、優しくて明るくて頭がいいといった、好かれる人間になるようにしている。
助けを求められたら二つ返事で期待に応え、遊びに誘われれば、酷く悪い内容でなければ誘いにのってあげる。友達は多く社交的に、授業やクラスの活動では頼れる学級委員として活躍する。
それが心桜の意識しているものだ。
鈴華の笑顔を見て、自分が感謝されているという事実にとても満たされた気持ちになった。
みんなを騙している自分を嫌に思った。
自分は誰よりも醜い人間だと思った。
授業が終わると、また鈴華は心桜のもとへやってきた。鈴華だけでなく、鈴華の友人らもまとめて私の前に立ちはだかった。
非常に嫌な予感がする。
鈴華達はクラスでは発言力の高いグループの中心人物であり、良好な友人関係を築くことができれば心桜の立場も安全になり、逆に目をつけられればいじめ等の標的になる可能性も出てくる。だから、心桜は鈴華と関わるときにはそこそこ高い知力をフル稼働して、慎重に、しっぽをださないようにしているのだ。
「心桜ちゃん、もうすぐテストがあるじゃん?だからさ、ウチら勉強会する予定だからさ、参加してくんない?」
勉強を教えろと遠回しに言われているんだろうなと、心桜は思う。
どうせ、勉強を初めて30分ぐらいすれば、「私めっちゃ頑張ったから休憩しよー」とか言ってスマホをいじりだすんだろう。そしてショート動画をみてる間に二時間も三時間もたって、時間がなくなちゃったと嘆くんだろう。
そうなれば、わざわざ教えに来た必要が無くなるし、それぐらいなら一人で静かな家の中で勉強をしていた方がよっぽどためになるだろう。
心桜は不快に思われない断り方を頭の中でシュミレーションし、考えた。鈴華の言葉からして、勉強会の日程は決まっているのだろう。
「勉強を教えて欲しいのなら、いくらでも教えてあげるよ」
一度お願いを受け入れる。
「わー、ありがとー!それで日なんだけどさ、今週の土曜日になってるんだけど、どうかな?」
「土曜日……」心桜は小さな声で呟く。そして、口をへの字にまげ、軽く眉間にシワをよせて、いかにも申し訳なさそうな表情をつくる。
「ごめん、その日はおばあちゃん家に行く予定があるんだ。だから難しいかも」
「そっか、今週の土曜日っていったらもうすぐだもんね。予定はいってるよね」
「教えて欲しいときはいつでも言ってね。休み時間とか、放課後だったらLINEとか使って教えるよ」
おばあちゃん家に行く用事なんてない。でも、これが一番諦めてもらいやすい言い訳だったのだ。
私は個人的な理由のために、嘘をついた。
私は醜い人間だ。
「心桜ちゃん、ここの解き方教えてー」
その甘えるような助けが自分に向けられたことを認識し、目の前に座る森野鈴華に視線を向けた。
心桜は今、難問をといている真っ最中である。
「ああ、連立方程式ね。それならxかyが同じ係数、えっと、前の数が同じになってないか見て」
鈴華は陽キャ特有の上っ面だけ明るくしたような、中身の薄いオーバーリアクションで口を尖らせる。
「むむむぅ~?そろってないなぁ」
「それなら、前の数を分数の通分みたいに揃えられないか考えてみて。」
「『ツーブン』って何?え〜、わからないよぉ」
式にたどり着くまでが難しい上に計算が複雑な問題を中断させられ、内心イラッとする。
しばらくして。
「わあ、解けたよ!ありがとう心桜ちゃん」
嬉しそうに口角を上げる鈴華。
式にたどり着くまでが難しい上に計算が複雑な問題を中断させられ、内心イライラしているが、悟られないように心桜は微笑む。
佐倉心桜は優等生として生きている。何故なら、中学校というトゲトゲチクチクとした社会で生き抜くためである。簡単に言えば、「優等生」というラベルが貼られればでいじりやいじめの類いを受けにくいということだ。
しかし、ただただ優等生をしているだけでは真面目と等しく裏で何かを言われてしまう。孤立する可能性も高い。なので、優しくて明るくて頭がいいといった、好かれる人間になるようにしている。
助けを求められたら二つ返事で期待に応え、遊びに誘われれば、酷く悪い内容でなければ誘いにのってあげる。友達は多く社交的に、授業やクラスの活動では頼れる学級委員として活躍する。
それが心桜の意識しているものだ。
鈴華の笑顔を見て、自分が感謝されているという事実にとても満たされた気持ちになった。
みんなを騙している自分を嫌に思った。
自分は誰よりも醜い人間だと思った。
授業が終わると、また鈴華は心桜のもとへやってきた。鈴華だけでなく、鈴華の友人らもまとめて私の前に立ちはだかった。
非常に嫌な予感がする。
鈴華達はクラスでは発言力の高いグループの中心人物であり、良好な友人関係を築くことができれば心桜の立場も安全になり、逆に目をつけられればいじめ等の標的になる可能性も出てくる。だから、心桜は鈴華と関わるときにはそこそこ高い知力をフル稼働して、慎重に、しっぽをださないようにしているのだ。
「心桜ちゃん、もうすぐテストがあるじゃん?だからさ、ウチら勉強会する予定だからさ、参加してくんない?」
勉強を教えろと遠回しに言われているんだろうなと、心桜は思う。
どうせ、勉強を初めて30分ぐらいすれば、「私めっちゃ頑張ったから休憩しよー」とか言ってスマホをいじりだすんだろう。そしてショート動画をみてる間に二時間も三時間もたって、時間がなくなちゃったと嘆くんだろう。
そうなれば、わざわざ教えに来た必要が無くなるし、それぐらいなら一人で静かな家の中で勉強をしていた方がよっぽどためになるだろう。
心桜は不快に思われない断り方を頭の中でシュミレーションし、考えた。鈴華の言葉からして、勉強会の日程は決まっているのだろう。
「勉強を教えて欲しいのなら、いくらでも教えてあげるよ」
一度お願いを受け入れる。
「わー、ありがとー!それで日なんだけどさ、今週の土曜日になってるんだけど、どうかな?」
「土曜日……」心桜は小さな声で呟く。そして、口をへの字にまげ、軽く眉間にシワをよせて、いかにも申し訳なさそうな表情をつくる。
「ごめん、その日はおばあちゃん家に行く予定があるんだ。だから難しいかも」
「そっか、今週の土曜日っていったらもうすぐだもんね。予定はいってるよね」
「教えて欲しいときはいつでも言ってね。休み時間とか、放課後だったらLINEとか使って教えるよ」
おばあちゃん家に行く用事なんてない。でも、これが一番諦めてもらいやすい言い訳だったのだ。
私は個人的な理由のために、嘘をついた。
私は醜い人間だ。
