バシャン。
 心桜(みお)は傘を投げ捨てた。地面に叩きつけたと言った方が正しいかもしれない。その衝撃で地面に張っていた薄い雨水の膜が弾け、跳ねる。
 落下音は雨音によってすぐに消し去られた。
 視界が霞むほどの大雨が強風で強く打ちつけられ、心桜の体は痛みと共に濡れてゆく。
 握りしめていたスマホが大きく振動する。大きな大きなアラームがなる。
 『避難指示が発令されました。避難指示が発令されました。今すぐ避難してください。該当地域は―』
 人が外に出てくる前に終わらせよう。
 一歩向こうには、この街が恐ろしいほど低く見える。 

 「今日は死ぬのにふさわしい夜だ」