後宮のガリレオ3

 「お待ちください!」

 張り詰めた空気を切り裂くような鋭い声が、主殿(とのもり)に響き渡った。数百の視線が一斉にその女官へと集まる。

 顔には緊張の色が浮かんでいた。無理もない。これほどの人を前にして声をあげるなど、並大抵の度胸ではできまい。ましてや相手は妃である。

 それでも女官は退かなかった。歯を食いしばり、目を爛々(らんらん)と炎の赤に揺らめかせながら、広場中央の妃を睨みつけている。

 やがて意を決したようにこちらへ向き直ると、慇懃(いんぎん)に一礼。

 「発言をお許し願います」

 この女官はなにを言うつもりか。かの妃の目論見を崩すか。それとも。

 皇帝は黙って女官――麗麗(リーリー)を見た。

 おもしろい。

 この者が、我が『(イェン)(こく)』にとって光となるか、闇となるか。見定めてやろうではないか。

 皇帝は目元にわずかな笑みを刻み、重々しく口を開いた。

 「許す」