完璧主義OL、サ飯に学ぶ

 例えば、今みたいに「サウナ入りたい」とか、「カツカレー食べたい」とか、そういう小さな行動だって、私の人生における選択肢なわけで。
 そういう、自分らしくいられる選択を繰り返していくことが、大事なのかもしれないな。
「うん」
 ここ数年の漠然とした不安が晴れて、スッキリした気持ちだ。
 人生の先輩である江角さん、そして、サウナとサ飯に学んだ私なのだった。
――ここで、ささやかな選択肢をもう一つ。
 私はタブレットを手に取ると、ニヤケ顔で注文を終える。
 程なくして運ばれてきたのは、冷えたグラスと弾ける炭酸、並々と注がれた黄金色のビール! 真夏の五感に訴えかけてくる存在だ。泡とビールのバランスもベストで嬉しい。
 グビグビと喉を鳴らして、一気に半分程を飲んだ。カレーでこってりしていた口内が、さっぱりと冷えていく。喉から胃へと染み渡る清涼感。
 あ〜〜、美味しい! 幸せ!
 今の自分が求める心地良さを選べるようになって、ようやくオトナの女性に仲間入り出来たかも!
 ニマニマと笑いながら、そう思っていたんだけど……。


 翌朝。私はキャリーケースを引きずりながら、新幹線の乗り場へと駆けていた。
――遅れる〜!!
 昨夜、アルコールに強くないにも関わらずビールをおかわりした私は、ホテルに帰ってすぐに寝た。そして、見事に寝坊したのだった。
 今日は会社に戻って、江角さんとのコラボグッズのサンプル発注をしなくてはならないのに!
 いつもなら、もっと時間に余裕を持って行動出来るんだけどな……。完璧OL、またもや崩壊。
 とはいえ、目覚めはスッキリしていて、出張の疲れも取れている。普段は寝付きが悪い私にしては、珍しいことだ。
 なので、こうして朝からダッシュ出来るわけで。いや、褒められたことじゃないけどさ。
――あっ、新幹線、もう来てる!
 そそくさと車両に乗り込む。無事に指定席に座れて、ホッと息を吐いた。良かった、間に合った〜!
 少ししてから、新幹線のドアが閉まり、ゆっくりと走り出す。窓の外の景色を見ながら、再びため息を吐いた。
 あ〜あ、もうアラサーなのに、オトナの自立した女性には程遠いわね。
「ま、いっか」
 無意識の内に出たひとりごとに、自分でびっくりする。
 でも、そうだよね。焦らずに、少しずつ目指していけばいいよね。自分らしい選択を積み重ねながら。
 車窓に映る私の顔は、何だかスッキリしている。サウナのおかげでお肌もツヤツヤになり、化粧ノリが良かったもんね。
――これからも、自分なりの楽しみを見つけて生きてみよう。
 良い意味で、肩の力が抜けた東京出張だった。