完璧主義OL、サ飯に学ぶ

「分かりました。よろしくお願いします」
 これにて、打ち合わせは無事に終了! 夏場だから窓の外は明るいけれど、もう夕刻だ。
「川辺さん、ちょっと休憩していかれませんか?」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
 江角さんが今度は紅茶を淹れてくれた。アールグレイのスッキリした柑橘系の香りが、打ち合わせでエキサイトした頭をクールダウンさせる。
「ふ〜、美味しい」
「ありがとうございます。川辺さん、知識が豊富で頼りになりますよ」
「そんな、私はあくまでサポートですから。江角さんの素敵なイラストがあってこそです!」
 江角さんは本心で言ってくれてるんだろうけど、私の仕事なんて、数年やれば誰でも出来るようになる。彼女みたいに、独立して食べていけるスキルではないのだ。
 ふと、江角さんがどうやって今の暮らしを手に入れたのかが気になった。
「あの、江角さんはいつ独立されたんですか?」
「二十七歳の時なので、六年前ですね」
「今の私と同じ歳!」
「あら、そうなんですね」
 江角さんは微笑むと、記憶を手繰り寄せるように斜め上を見上げた。
「その時は、会社員とイラストレーターの二足のわらじでやってました。幸運にも、イラストのお仕事だけで生活していけそうだったので、思い切って会社を辞めたんですよ」
「う〜ん、すごいなぁ」
 サラッと言ってのけるけど、実現するのは難しいよね。やりたいって気持ちだけで就ける仕事じゃないもの。
 江角さんは、昔を懐かしむような柔らかい表情で語る。
「そして、仕事が軌道に乗った三十歳の時に考えたんです。私、どんな暮らしがしたいんだろうって。フリーランスは、働く場所を選べますからね」
「それで、こちらのお宅を購入されたんですか?」
「はい。自然いっぱいの、のどかなところで暮らすのが夢だったので。一人暮らしに丁度良さそうな古民家を買って、リノベーションしました」
 満足そうに頷く江角さんを、憧れの眼差しで見つめる。永遠の少女って感じの可愛らしい容姿だけど、実際は、自分の考えをしっかり持ったオトナの女性なんだなぁ。
「すごい……ああ、もうそれしか言えません! 私なんて、目の前のタスクをこなすのに必死で、将来のことなんて考えられなくて」
「川辺さんだって、お仕事頑張っててすごいじゃないですか」
 江角さんの優しいフォローに、首をぶんぶんと勢いよく横に振る。