笹と川のせせらぎ

長い冬が終わりを告げ、少しずつ温かくなってきた頃、彼女は頻繁に体調を崩すようになった。
ときには会話をしているときにも急に胸を押さえ、倒れ込むこともあった。
私はどうしたらいいかわからず、とっさにナースコールを押す。
数分後には看護師が来て、隣に常備している機械を起動すると彼女の顔に装着する。
しばらくすると呼吸も安定してきて、安らかな顔になる。
睡眠作用もあるのかもしれない。
目を瞑っているときは健康そのもののように見えてしまう。
こんな状態に何度も遭遇するとこのまま目を覚まさなくなるんじゃないかととても不安になってしまう。
だからそんなときは、彼女の手を握りしめた。
この手を離したらささかわがどこか遠くにいってしまうような気がして、不安だった。



目を覚ますまで待つこと数時間、ゆっくりと彼女が目を開ける。

『君、今日もきてくれてたんだ』
『いつも…ありがとう』
『また眠くなっちゃったみたい』
『せっかく来てくれたのに、ごめんね?』
「そんなことない、そんなことないよ!」
「僕はささの傍にいられればそれだけで幸せなんだよ」
「ずーーーっとこのまま手を繋いでいたい」
『駄目だよ』
『それはボクがその…恥ずかしいから』

彼女の顔が赤くなったような気がした。
日に日に弱っていき、やせ細っていく彼女の手をぎゅっと握りしめ、涙がホロリと流れ落ちた。

『ど、どうしたの?どこか痛い?』
「ち、ちがうよ、痛いところはない」
「あ…胸が痛い、かな」
『え、あ、だ、大丈夫?』
『ボクと一緒、だね』

ツンと胸を指先で刺される。
私の「痛い」は精神的な痛みでもちろん彼女の「痛い」とは違う。
だけど、彼女のその冗談に少し救われた気がした。
彼女が辛いことはもちろんだけれど、その苦しんでる姿を見ている私も辛かったりする。
何もしてあげられないことも相まって余計に辛く、悲しかったので、
彼女の「冗談」のおかげで少し気持ちが和らいだ。

「お揃いだね」
『ボクと君はお揃い!』
「うん、ずっとそばにいるね?」
『うん……』



彼女の釈然としない最後の返事がとても…胸に引っかかった。