笹と川のせせらぎ

しばらく誰もいない病室で崩れ落ちていると、後ろから声がした。

「君は…いつもお見舞いに来てる子だね?」

いつも彼女を担当していた看護師さんだ。

「今日もお見舞い、きてくれたんだね?」

泣きじゃくってまともに受け答えができる状態ではなかった。

「沙羅ちゃん…あ、笹川さんは大丈夫よ?」
「危険な状態ではあるけど、病棟をうつったの」
「ついてきて?」

そう言って私の手を取り、彼女がいるという病室まで手を引いてくれた。

前よりも大きく、広々とした、すっきりとした部屋に案内された。
そこにはなにやら物騒な機械が立ち並び、広さのわりにその機材たちのせいで広さが半減しており、
その一角に設置されたベッドに彼女はちょこんと寝そべっていた。
私の姿を見つけると彼女は勢いよく飛び跳ねた。

『あ、きたの?』

そっけなさそうに言いつつも、彼女は嬉しそうな顔をしていた。
前よりも重苦しい部屋にひとりぼっち。
そう考えると、彼女も心細かったのだろう。
雨の中、お見舞いしにきてホントによかったなと心から思った。

「今日は天気悪いでしょ?」
「無性にささの顔が見たくてね」
「きちゃった!」

冗談っぽく言ったのに、彼女は心底嬉しそうに私の手を取り、撫でまわしながら、一滴の涙を流していた。

『うん。ボクもね、君の顔が見たいなぁって思ってた』
『おんなじ気持ちだね』

彼女は私の頬に手を伸ばし、ここにいることを確認するかのように触り始めた。

『うん、うん、君がいる。夢じゃない』
『来てくれて、ありがとう?』

そう言って彼女ははにかんだ。
昔のような満面の笑顔ではないが、嬉しそうな顔。
私も彼女の頬を触り、彼女が今ここにいることを再確認した。

「よかった…!」
「君がいてくれて」

私もつられて涙を流した。