笹と川のせせらぎ

あの日から彼女はみるみると弱っていっているのが明らかだった。
依然のような元気はなく、どこか無理している感じ。

「ささ、最近身体…辛い?」
『ん…』
「身体、横にしたら少しは楽…かも」
「背もたれ、下げよっか?」
『ん…』

彼女の手を握りながら、会話を止めまいと必死に話しかける。
しかし、話を振っても返ってくるのは相槌ばかり。
窓の方をじっと見つめ、物思いに耽っているようにも見える。
とても…悪寒がした。
彼女が怖いとかではもちろんない。
彼女がとても遠い存在に感じられるようになってしまったからだ。
喧嘩をしたわけではない。
嫌なことをしたわけでもない。
でもなんだか距離感を感じてしまう。
走って追いかけても絶妙な距離感で追いつけない。
「ここ」にいるのに「ここ」にいない感覚。
触れたいのに触れられない存在。
まるで幽霊のようだ。
理由もわからないのが追い討ちをかけ、畳みかけてくる。
思い当たることといえば……
病気のことしかない。
彼女の容態が思わしくないのかもしれない。
そんなときこそ、頼ってほしい、もたれかかってきてほしいと願うものだが、
彼女のことだ、私に迷惑をかけたくないのだと思う。
だからこそ、もどかしい。
彼女の気持ちを汲んでこのまま素っ気ない態度を取られ続けるのを我慢するか、
このギクシャクをどうにか改善して、また前のように彼女と楽しい時間を過ごすか。
答えは明白だが、彼女の気持ちを考えるとこの空気を壊すのもいけないような気がして、悩んでしまう。

「ささは……このままでいいの?」
「寂しくは…ない?」
『ん…』

ひと呼吸置いた後、小さなつぶやきが微かに聞こえた。

『よくない…もん』
『でも……』
『ボク、もう長くな…いって……』


彼女のつぶやきは今にも消えそうなろうそくの炎のようにか弱く、力がなかった。
目にはうっすらと涙が溢れていた。


私は、ただ、彼女の手を握り、頭を撫でてあげることしかできなかった。