笹と川のせせらぎ

いきなり彼女が懐かしの過去話をしてきたので少し動揺したが、
彼女との意外な接点があったことに喜びつつ、忘れていた自分を呪った。
あの頃からずっと認識していたらもっとたくさん、彼女と遊べていただろうに……
今更後悔しても遅いが、彼女がそんな昔から私のことを、と思うとニヤけてしまう。

『なに、ニヤニヤしてるの』
『気持ち悪いよ!!』

バシっと背中を一喝されたところで我に返り、現実に戻ってくる。

「ごめん、思い出し笑いしちゃった」
「そういえば…そろそろ整理券の時間じゃない?」
「ぼちぼち向かおっか?」
『うん!そうだね』
『楽しみ~♪』

彼女はウサギに会えるというだけで気分が高揚しているようで、スキップしそうな勢いだった。
どうせならスキップしてくれた方が可愛くてよかったのにな~、と思いつつ、広場に戻る。

どんぐり広場にはすでにモルモットやウサギたちが野に放たれていて、
さながら「~カフェ」のように柵の中に放逐されていた。
ゲージから解放されたことで生き生きとしており、歩き回っている子もいれば、
立ち止まって人間たちの様子を伺う子もいる。
彼女は喜び勇んでどのウサギと触れ合おうか品定めしていた。

『この子にしようかなぁ?』
『あ、でもこの子も可愛い!』
「どの子も一緒にしか見えない…!」
『そんなことないよ!?』
『性格だって違うし、一匹一匹模様だって違うんだからっ』

そう言って、端っこの方でうずくまっている一匹の白い体毛に茶色のぶち模様のあるウサギに目をつける。
どうやらその子が気に入ったらしい。
そのまま抱きかかえ、近くの木の椅子に座って、温かく抱きしめながら撫で始めた。

『この子、人見知りなのかも?』
「だったら無理に抱きかかえたら嫌なんじゃな?」
『それもそうだけど…』
『独りぼっちは嫌だよ。やっぱり可哀想だもの』
『みんな、抱きかかえられてたり、仲間たちと一緒にいるのにこの子だけ独りぼっちだった』
『ボクが抱っこしてあげないと孤独になっちゃう』
『ウサギさんはね、ひとりじゃ寂しくて死んじゃうんだよ?』
「で、でもそれは嘘って…」
『ボクは信じる!』
『どんな理由があっても、結果的に集団でいられない子は弱っちゃうと思うんだ』
『だから…独りぼっちはいやだもん!』

そう言って、彼女はそのウサギを撫でまわし、時間いっぱいまで膝に乗せ、愛でてあげていた。