笹と川のせせらぎ

泣き終えた後…というより、抱きしめたことで安心したのだろうか、
いつの間にか「スースー」と寝息をたてながら彼女は眠ってしまっていた。
そのまま崩れ落ち、私の膝に落ち着く。
彼女の寝顔を見ると可愛い…ではなく、病気なんて嘘のように安らかで元気そうな顔をしている。
そっと、彼女の顔にかかる髪の毛をかき分けてあげると、

『ん…』

と寝返りを打つ。
起こしてしまったかと冷や冷やしたが、大丈夫そうだ。
そろそろ膝枕では肩を痛めるだろうと、名残惜しいが彼女の頭を優しく撫でてから、そっとベッドに戻してあげた。

「君のこと、ずっと守ってあげたいな」

誰に言うでもなく、ボソっとつぶやく。
私の声と彼女の吐息だけがこの病室を支配する。
今は、「静寂」だけが私の話し相手。

「何が、してあげられるかな」
「そういえば…ささは動物好きなのかな?」
「あんまりファンシーなのは好きなイメージがないけど…」
「小動物とか好きなんだろうか?」
「今度、聞いてみようかな?」

そう言いながら、彼女をじーーーっと見て、観察する。
もちろん、やましいことは何もしていない!
変なことも考えていない。
ただ、彼女の安らかな寝姿を眺めていると、
本当に彼女は病気で苦しんでいるのか?と思ってしまう。
最近は胸を押さえる頻度が多くなってきたように感じる。
きっと…悪化しているのだろう。
当人じゃなくてもわかる。
顔色もどんどん悪くなっている。
それでも、笑顔で私と向き合ってくれる。
もしかしたらその笑顔は私にしか向けていないのかもしれない。
看護師や先生や両親には悲痛な顔をしているのかもしれない。
そう考えると私も彼女といるときは、悲しい顔よりも笑顔でいてあげたい…いや、笑顔でいなきゃいけないなと思う。

「さら、ずっと一緒にいるからね」
「約束。」

彼女の左手をそっと取り、小指を借りて「指切り」をした。
彼女の左手には、お祭りでプレゼントした指輪がキラリと光っていた。