笹と川のせせらぎ

夜も更け、会場の櫓から太鼓の音が聞こえてくると盆踊りも始まった。
踊ってもよかったのだが、彼女はゲームコーナーに首ったけだった。
金魚すくいもやりたそうだったが、金魚を病室では育てられないと断念した。
輪投げ、玉転がし、パチンコなどがあるなか、彼女は射的をやりたいと言い出した。
彼女がやりたいなら…と渋々並んだのだ。
私と彼女、1回ずつやることにした。
彼女はやる気満々だったが、私はあまり上手でもないしな…と温度差があった。

『ボク、がんばっちゃうよ!』
「君ならなんか打ち抜けそうだ」

彼女は握りこぶしを作り、マッスルなポーズをして自信ありげだ。

いざ私たちの番になり、銃を構えて射的の火ぶたが切って落とされた。



彼女は結局何も当たらなかった。
無理もない。
大物ばかり狙って当たってはいても、全然倒れなかったのだ。

『あ~あ。カッコいいとこ見せようと思ったのに~!』
「十分かっこよかったよ?的には当たってたしっ」
『でも倒れなかったーーーー』
『くやしーーー!』

そして僕はというと…

「はい。ささ」
「君にプレゼント」

まさかの景品をゲットしていたのだ。

『えっ で、でも』
「いいのいいの。何か取れたらささにあげようと思ってたし!」
「そんなに高いものじゃないけど…」

そう言ってプレゼントしたものは大して高くもない、ステンレス製の指輪だった。

「おはめしましょうか?お嬢様」
『ば、ばか!』
『そんなこと言われると余計恥ずかしぃ…』
「今はこんなものだけど…いつか本物あげたいな、なんて」
『んーん』
『「こんなもの」なんかじゃないよ』
『すごく…嬉しい。ありがとぅ』
『とっても大事にするね?』

そう言って彼女はその指輪を自分の左手、中指にはめて、天を仰ぐように見上げていた。
体格のわりに小さな手、少しぶかぶかだったが、彼女は目をキラキラさせて、その指輪を大事そうに眺めていた。

『銀色で本物の指輪っぽい!』
『リーフ柄の模様刻まれてなんか素敵だね』

彼女のこの素敵な笑顔が今も忘れられない。
笑っていてくれる。
その姿を見るだけで私はとても幸せな気持ちになった。

ずっと傍にいてほしいな、そう思った。



お祭りは夜更けまで続き、彼女とはギリギリまでめいっぱい遊びつくした。
彼女の身体と相談し、そろそろ帰ろう!となった頃には人通りも少なく、なんとなく、寂しい気持ちになっていった。