笹と川のせせらぎ

ようやく夏休みになった。
「学校」という束縛から解放されたのだ。
校長先生からのながーーーい話を聞き、宿題リストと通知表を渡されると生徒たちは足早に去っていく。
結局ささかわが登校することはできなかったが、私が仲がいいことを見越して、

「どうせお見舞いいくのよね?渡しておいてくれると嬉しいわ」

そう言って担任の先生が彼女宛てのいろいろなプリントをもっさりと渡してきた。
それはまぁ…お見舞いは行くのですが、こういうのは先生が渡すのが…と言おうとしたらもう姿が見えなかった。

さて…と、息を吐いて家に帰るとマイ自転車に跨り、彼女の元へ向かうのであった。



『君と出会えてから、ボクの世界はどんどん広がっている気がするよ』
『病室のベッドから見える四角いだけの空だけじゃなくて、いろんな「外」の世界を教えてくれてる。』
『感謝しなきゃな~!』

彼女に会うと急にそんなことを言ってきた。

『ねぇ、ボク、いつか元気になったら君と一緒にお祭りとか海に行きたいな』
『太鼓の音と煌びやかな提灯の下でいろんなもの食べたり遊んだりしたい』
『波の音を聞きながら、浜辺を二人で歩いてみたい』

今日はやけに饒舌だ。
いつもそうだったけど、今日は間髪入れずに話してくる。
何かあったのだろうか…?

「ささ、今日はどうしたの?」
「何か…焦ってる?」

『そんなことないよ』
『ただ……』

「ただ…?」

『道を歩く子供たちを見るとボクだけこんな箱に詰め込まれて惨めだな…って』

そう言って、寂しそうに笑う。

『なんかボクらしくないよね、ごめんごめん、今のなし!』
『忘れて!』

「約束。約束しよ。」
「お祭りや海、行こう、一緒に」

彼女の顔はみるみるしわくちゃになっていった。

『君はずるい』
『ずるいよ…なんで出来ない約束、するの』

「できる。叶えるから」
「約束は破るものじゃなくて叶えるものだよ」

彼女は静かに、ぽろぽろと涙を流しながら笑顔で頷いていた。