笹と川のせせらぎ

プールが始まって間もなく、学校は夏休みに向けて徐々に宿題が出されたり、家に持ち帰るものが増えてきた。
一気に持ち帰る子もいるが、私はそんな苦しみは味わいたくはないので、少しずつ毎日持ち帰っている。
今もあるのかはわからないが、昔は朝顔やら道具箱をはじめ、
防災頭巾や鍵盤ハーモニカ、上履きや普段は置きっぱなしにしている教科書一式も持ち帰らねばならず、
それはもう会社の棚卸のごとく、大量の荷物を運ばなければならなかったのである。
もちろん、ギリギリまで使うものもあるのでそれらは持ち帰れないが、
計画的に持ち帰らねば、学校最終日が苦行になることは目に見えているのだ。

「音楽の授業はもうないから…っと」

今日は大物の鍵盤ハーモニカを持ち帰ることができる。
音楽は好きだ。
クラシックはわりと家の中で流れるし、
ベートーベンやショパンはそれこそよく聴くし、大好きだ。
このころは親の影響もあり、コンサートなんてのもしょっちゅう連れていかれていた。
この時点ではまだ習っていないが、後々、私はピアノ教室に通うことになるくらいには好きだったりする。
その後、音楽の趣味はパンク→ロック→メタルと変化していき、ギターを手にするようになるのだが、
今はその話は置いておこう。

音楽は好きなのだが、鍵盤ハーモニカは重いので早めに持ち帰れるのはありがたい。

そしてふと、彼女がいたであろう机に目がいく。
もちろん登校していないので何もかかっていないのだが、教科書とノートだけは机の中にしまってあるのが見えた。
1週間ほどとはいえ、彼女は「ココ」にいたのだ。
そういうぬくもりを感じるとなんとなく、嬉しかった。

「今日、ささに届けてあげようかな?」

そう思い、彼女の机に入っていた教科書とノートを取り出すと、ノートの切れ端がハラリと地面に落ちた。

そこには宛名不明の恋文があった。