笹と川のせせらぎ

ふと考えることがある。
彼女はどこが悪いのだろうか?
こうして会話も普通にできるし、具合も悪そうじゃない。
どこか不自由しているわけでもないし、見た目に何か表れているわけでもない。
ある日、ひょこり元気に登校してきてくれるんじゃないかとすら思ってしまう。
だけど、それを聞くのが怖かった。
聞いてしまったら何かが崩れてしまいそうで…
そしてなによりも、彼女を悲しませてしまうんじゃないかって。
こんなに毎日笑顔になってくれて、元気いっぱいなのに、
この幸せな時間を壊したくなくて、どうしても聞くことができなかった。

あの4年生の時の夕日に染まった教室で独りぼっちになっていた彼女の姿を見たくはないのだ。

「ささっていつもは何してるの?」
『んー?寝てることが多いかな?薬の影響もあるかも』
『気づいたらボーっとして寝ちゃってるんだよね』
「そっか…」
「僕がいないときも退屈しないように絵でも描く?」
『えー!ボク、絵、下手だよ。すごくすごーーく下手だよ!?』
「絵はね、下手でもいいんだよ。描き続けることが大切なんだ」
『君がそう言うなら…ちょっと描いてみようかな?』
「うん!」

少しでも生きがいを見つけてほしかった。
別に上手くならなくてもいい。
生きる目的があれば、頑張れる力になれるかなと思ったのだ。

「ささの絵、楽しみだなぁ」
『バカ!下手だって言ったよね!?』
『描いても見せないんだからっ』

どこか嬉しそうだった。