出張の晩ごはんは各自で

いったい、なにを言われるのかと落ち着かない。
乾いた喉にお茶を流し込みながら、冷たいのを選んでよかったと思っていた。

「あれ、最高です」

夏美の顔を見つめ、浅生が真剣に告げる。

「俺、癖になりそうです」

「……は?」

間抜けな一音を発し、夏美は無意識にもうひとくち、お茶を飲んでいた。

「もー、滅茶苦茶楽しくて。
なんていうか、背徳感?
またぜひ、やりたいです」

「ああ、そうか。
よかったな」

曖昧な笑顔を浮かべ、手の中の紙コップを弄ぶ。

「はい。
初めて飲む麦焼酎も美味しくて、思わず飲み干してしまうところでした。
次の出張が楽しみです」

「私は当分、いいけどな」

窓の外へと目を向けながら夏美は、次は愚痴のお供にはB級邦画ホラーだと教えてやろうと思っていた。


【終】