おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

 鶏肉、ごはん、と交互に箸が伸びて、止まらない。
 脳内ではもちろん、山頂で叫んでいる。
『ごはんに合う~!』『合う~』『合うぅ……』
 ダメだ、このままでは。キャベツにいっとかないと!
 誘惑に耐えながらキャベツを箸でつまみ、口に運ぶ。
「ん!」
 私の予想、超えてきたああ!
 これはもしかして。
 玉ねぎ、にんじん、もやしを食べて、私は確信する。
 普通と違って、けいちゃんのキャベツは甘み担当じゃない。芯のほうから使われているから、触感をかえるアクセントであり、たれがしみこみにくいから味がぎとぎとしない。ほかの野菜を従えて全体的な味のバランスを整えるかじ取り役であり、キャベツがあるから味が立体化している。
「幸せ~」
 左手に茶碗、右手にはしを持ったまま、じーんとひたる。
 砂漠にオアシス、地獄に仏、国道156号線にドライブイン奥美濃。
 こんなおいしいごはんは久しぶり。
 ひとり暮らしで自炊せず、ごはんは外食かコンビニ、お惣菜。たまに自分で用意するときにはお米を炊くくらい。レトルトカレーかカップ麺。これを料理と称したら主婦や主夫に怒鳴りこまれること必至だ。
「こんなにおいしいのに、どうしてお客さんがいないんだろう」
 時刻はもう六時。ごはんどきだからお客さんがもっと来てもおかしくない。
 隣にコンビニがあるから? 外観が古くて怖いから?
 どっちもありそうだ。実際、自分は入るのをためらったし。
 いや、平日より土日がメインかもしれない。
 ……もったいないな。このお店、ポテンシャルはあるのにそれを出せていない。
 コンビニのスーパーバイザーとして働いているから、お店の改善点を挙げるのは癖になっている。より良いお店にするためには……と常に考えているから。
 だけど今の私はひとりの客。口出しするわけにもいかない。店主……女将の方針もあるだろうし、生活できる程度に稼げればいい人だっているし。
 うずうずするのを押さえていると、またがらっと扉が開いた。
「おばあちゃーん。ごはん食べに来たよー」
 入ってきたのは元気そうな女の子。高校生くらいだろうか。長い髪をポニーテールにして、Tシャツにデニムという軽装だ。