おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「発注しぼりすぎじゃない?」
 ロスが怖いのはわかるけど、コンビニに来てこれでは。
 カップ麺ならあるけれど、残ったスープをどこに捨てたらいいのかわからない。
 希望を見た後だと、絶望はなおさら深い。痛いくらいのこの空腹をどうしたらいいのだろう。
 お菓子でおなかをごまかすか……いや、がっつり食べたい。お米が食べたい!
 私は透視するかのようにドリンクコーナーを見た。
 お隣にはドライブインがあった……そこには、ごはんが、ある、はず!!
 私は意を決し、お茶だけを買って店を出た。
 車にお茶を置いてからドライブインを見つめる。
 古いモルタルの外壁は長年の雨で黒い縦染みがいくつも垂れている。屋根に掲げられた看板は白地なのだけど同じく雨で縦じまができて、あちこちにさびも浮いている。黒く古臭いゴシック体で『ドライブイン奥美濃』と書かれている。
「ザ、昭和だ」
 果たしてここで大丈夫だろうか。そもそも営業しているのか……。
だだっ広い駐車場は路面が荒れているが、草は生えていない。むしる人がいなければこれでもかって生えてくるものだから、人の手が入っている証拠だ。
 私はそろそろと近づいてみる。模様入りのガラス窓は少し開いていて、蛍光灯がついているのが見えた。定休日は水曜日と書いてあるが、今日は木曜だから大丈夫。営業時間は午前十時から午後十九時まで。
 ぐうう、と緊急の補給を訴えるおなかの虫。猫からもっとかわいげを学びなさい。にゃあとかみゃあとか、かわいく鳴くべき。
 そんな主張が届くわけもなく。
「老舗ってことだよね。きっとおいしいんだ」
 私は勇気を出して一歩を進んだ。
 扉は横開き。木枠にはまったガラスには凹凸で模様が描かれている。確か、型板ガラスっていうんだっけ。
 引き開けると、がらがらと音がした。
 入口すぐにレジ台があり、近くの棚には周りに数種類のお菓子、軍手やボックスティッシュなど、ちょっとした日用品も置いてあった。ミニミニコンビニみたいだ。
 古びたレジスターの背後の台には、レースのドイリーに黒電話が鎮座している。ダイヤル式なんて初めて見るかも。インテリアかな?
 店内にはそっけない白いテーブルと鉄パイプの椅子が並んでいて、古びているけどよく手入れされているようだ。