おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「大学は名古屋の経営学部に決めたんだって? 美術はいいの?」
「うん。趣味でいいやって。お店の経営のほうが面白そう」
「人に影響されやすくてあかんわ」
 奥から花代子さんが出てきて苦笑する。会釈をすると、にこやかに会釈を返してくれた。
「お母さん、経済学部にするって言ったら喜んでたじゃん」
「就職はしやすいやろうからね」
「でも、ここからじゃ通えないですよね」
「バイトでがんがんひとり暮らしの費用稼ぐから」
 任せて、と言わんばかりに希絵ちゃんがガッツポーズをする。お手伝いではなく、正式にバイトとしてドライブイン奥美濃で働く予定だという。
「お母さんに小里江さんが来たこと、言ってくるわ」
 そう言って花代子さんは厨房に消える。
「駐車場は共用にしたんだね」
「そう。おばあちゃん、人が良すぎる」
「だけどその人徳でうまくいったよね。私は心が狭いから、コンビニがつぶれたら敷地を買える、とか思ってた。それもあって塀を建てない方向で考えてたんだよ」
「そこまで見越して?」
 希絵ちゃんが驚いた顔になる。
「コンビニ運営ってきついからね。リタイアするオーナーさんはけっこういらっしゃるの」
「うわ、腹黒っ! 悪女だっ!」
 言いながら、希絵ちゃんが笑う。
「大人は一筋縄じゃないんだからね」
 にやり、と私は笑って見せた。
「だけどオーナーさんが続けてくれるのが一番だよ」
 柿内さんにお弁当やパンの発注を増やすようにアドバイスしたところ、それを受け入れてくれて、売り上げが回復したという。唐田さんは「俺が言っても聞いてくれなかったのに」とちょっとへこんでいて申し訳ない。
「オーナーさんや店長さんが頑張ってると、負けてられない、がんばろうって思えるよ」
 にゃあ、と猫店長が返事をして、私は苦笑した。
「『店長』に反応してる」
「自覚あるんだ」
 私は鞄から猫のおやつを出して封を切り、そっと差し出す。
 ぺろぺろ食べている間にそっと触ると、びくっとした店長は、だけどそのまま撫でさせてくれた。