おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「すごいお世話になったって」
「私はなにも」
 すべては叡子さんの人徳だと思う。
 課長はうきうきした足取りで席に戻っていく。
 私は衝撃が忘れられないまま、自席につく。
 ハトが豆でっぽうくったらこんな顔をしていると思う。
 ってかさ、「ハトが豆でっぽうくう」っておかしいよね。くらう、のほうが正しくない?
 なんとなく、真剣白刃取りのように、撃たれた豆をくちばしで受け止めるハトを想像してしまった。
「……仕事しよ」
 混乱する気持ちを忘れるように、仕事に打ち込んだ。
 だけど、ちょっとは浮かれていたことも否定はできない。

🐱🐱🐱🐱🐱

 停電事件から数か月後、私はわくわくしながらドライブイン奥美濃に向かった。
 到着した私は警備員に誘導されて駐車場に車を停める。
降りてすぐ、生まれ変わった店に目を細めた。
 入口の両サイドには『祝! リニューアルオープン!』と書かれたスタンド花がいくつも並んでいる。
 町長や商売仲間の名前に交じって、サークルM奥美濃店の名前も私の名前もある。
 スタンドの生花は開店時間を迎えたら町民に引っこ抜かれていくはずだ。花が早くなくなるほうが商売繁盛すると言われている。他県から来た人はこの風習にびっくりするらしい。実際、花が欲しい人たちの間で開店の情報がまわりまくって人が来てくれるし、お花がいろんなご家庭を楽しませてくれるし、一石二鳥だと思う。
 外壁は汚れが目立たないベージュブラウンに塗り直されて、看板はまっさらな新品。レトロな字体の『ドライブイン奥美濃』が輝いているように見える。
 新しいものは古くなる。レトロな価値が出るまでは「古臭くてださい」になってしまう。だったら最初からレトロなほうがいい。
 この数か月、希絵ちゃんや叡子さんと連絡を取り合い、叡子さん主導でお店の改築を話してきた。やる気にあふれた叡子さんに、花代子さんも「好きにしたらええわ」と認めてくれた。
 にゃん太のためにも長生きしなきゃ、と叡子さんは改築を決意。トイレは最新式でぴかぴか、お店の外装もぴかぴか!
 お店は繁盛しすぎて花代子さんがパートをやめてお店の手伝いに来ることになり、希絵ちゃんはバイトとして土日に勤務しているという。
 私はというと、お店が軌道に乗ったから毎週の訪問はやめていた。私がいたら叡子さんたちも気を使っちゃうからね。