おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「はあ、おいしい、生き返る~! さすが叡子さんやわ」
「けいちゃん焼き、おいしすぎ!」
「明宝ハム、うっま!」
 地元の人に交じって、観光客の声も聞こえる。

 私は嬉しくてこみあげるものを抑えるように胸を押さえた。
 砂漠にオアシス、地獄に仏。国道156号線にドライブイン奥美濃!
 ゴロが悪いけど、合言葉にしたいくらいだ。

 がらっとドアが開いた。
「いらっしゃいませ!」
 声をかけた私は、その姿に顔をひきつらせた。

 現れたのは、隣のコンビニの店長だ。
「なんで営業してんだよ!」

 私は焦った。
 きっと八つ当たりに来たんだ。隣の芝が青いと荒しにくるタイプ!

「柿内さん、ようおいでんさった」
 叡子さんはにこにこと出迎える。

「あそこのひとり席でええかね」
「食いにきたわけじゃねーよ!」
 怒鳴った直後。
 ぐうう、と彼のおなかが鳴った。

「食べてきんさい。お代はええから」
「お、俺には店があるんだ!」

「だったら届けたるもんで」
 叡子さんはにこにこ笑顔だ。

「俺を罠にはめる気か!?」
「なに言っとりゃあすか。お隣さんやないの。困ったときはお互いさま」
 叡子さんはにっこりと笑う。しわしわの顔が、さらにしわだらけだ。
 柿内さんは毒気を抜かれたみたいに呆けて、それから「バイトもいるんで」と言った。

「じゃあふたりぶんやね」
 叡子さんが答えると、柿内さんは頷いて店を出ていく。

 ……バイトのことを考える程度には人の心があるんだ?
 意外に思いながらお店を手伝う。
 ふたりぶんのけいちゃん焼き定食にラップをかけて、花代子さんのだんなさんが隣に運んでいった。

 いや、ちょっと待って。無料になった定食をバイトのぶんまでって、図々しくない?
 気になるけど、そっちばかりを考えてられない。