おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「いらっしゃいませ。やってますよ。相席でもいいですか?」
「はい」
 了承してもらえたので、私は席のお客さんにも許可をもらって相席してもらう。
混雑の原因は土砂崩れと停電だ。
 停電だとごはんも作れない。だからコンビニに人が殺到し、商品はすぐになくなる。スーパーも同様。しかし道路が通れないから、供給が途絶える。
 だからお客さんが増えると思った。
 そこで、叡子さんと話し合って決めた。けいちゃん焼きのお値段は特別にきりよく五百円。現金オンリーだからお会計をスムーズにするためだ。幸か不幸か、材料はたんまりある。
叡子さんは「こんなときは無料のほうがいいんやないの?」と言ったが、それはダメだ。お客さんのほうが申し訳なくなって食べづらくなってしまう。
「すみません、お会計」
「はーい」
 私はすぐにレジに行った。そこには親子三人が立っている。
「スマホ決済で」
 お父さんらしき人が言う。
「ごめんなさい、現金だけなんです」
 どのみち、停電だからきっと機材が使えない。
「現金持ってへんわ……」
 発音が関西っぽいからこのあたりの人ではないみたい。
「じゃあまた今度いらしたときに」
「え!?」
 お客さんがびっくりしている。
「でも、大阪から来てるんや。もうこっちにはこーへんかも……」
「いいですよ、いつでもいいんです」
これも、叡子さんと事前に打ち合わせていた。たとえそのお客さんが二度と来ないのだとしても、それでいいと叡子さんは言った。
 お客さんに安心してもらうため、私はにっこりと笑う。
「……すんまへん。おおきに」
 だんなさんが頭を下げると、奥さんは自分も頭を下げながら、「お礼言いや」と子供に促す。
「おおきに!」
 元気な声が、妙に心に響く。
 出ていく家族を見送り、すぐに店内を厨房に向かって歩く。