「すごい雨やねえ。車で走るのは危ないもんで、今日は無理しんと泊まってきんさい」
「でも……」
「ええから」
にっこりとほほ笑む叡子さんは、まるで菩薩のようで。
「ありがとうございます」
私は優しさをかみしめて頭を下げた。
🐱🐱🐱🐱
翌日もまだ雨は降っていた。昨日みたいな勢いはないけれど。
希絵ちゃんから借りたTシャツとジーンズを着て一階の食堂に降りると、叡子さんが大量の段ボールを前に困り果てていた。にゃん太が心配そうに叡子さんを見上げている。
「どうしたんですか?」
「鶏肉がぎょうさん。キャベツも味噌も。発注、間違えてまったわ」
私はとっさに尋ねる。
「冷蔵庫、冷凍庫に空きはありますか?」
「全部は無理やわ」
「うーん……『けいちゃん焼き定食祭り』として、少し値段を下げて定食がはけるようにするのはどうでしょう。希絵ちゃんにもネットで発信してもらって」
言ってから、はっとした。私はまた図々しく提案してしまった。
「とっさにアイディアが出てくるの、すごいねえ」
叡子さんはにこにこしている。ほんとに菩薩みたい。
突如、スマホが大きな音を鳴らした。この低い警告音、ろくなお知らせじゃない。
通知を見て、私は顔をしかめた。
「なんやった?」
「土砂災害警報です。レベル4だそうで。該当の地域はすぐに避難しないといけませんけど、ここは大丈夫そうです」
周りは山と川だから、この手の災害は起きやすい気がする。
「みんなが心配やわ」
叡子さんがこぼしたとき、電灯が急に消えた。
「停電!?」
外光が入るから真っ暗ではないけれど、暗い。
ジリリリリン、と大きな音が鳴った。
びくっと震える私を置いて、叡子さんが黒電話の受話器を取り上げる。
あれって現役だったんだ? 停電してても鳴るんだ?
「はい、ドライブイン奥美濃……ああ、花代子。え、土砂崩れで停電?」
私の耳がぴくっとした。全神経をそばだてる。
「でも……」
「ええから」
にっこりとほほ笑む叡子さんは、まるで菩薩のようで。
「ありがとうございます」
私は優しさをかみしめて頭を下げた。
🐱🐱🐱🐱
翌日もまだ雨は降っていた。昨日みたいな勢いはないけれど。
希絵ちゃんから借りたTシャツとジーンズを着て一階の食堂に降りると、叡子さんが大量の段ボールを前に困り果てていた。にゃん太が心配そうに叡子さんを見上げている。
「どうしたんですか?」
「鶏肉がぎょうさん。キャベツも味噌も。発注、間違えてまったわ」
私はとっさに尋ねる。
「冷蔵庫、冷凍庫に空きはありますか?」
「全部は無理やわ」
「うーん……『けいちゃん焼き定食祭り』として、少し値段を下げて定食がはけるようにするのはどうでしょう。希絵ちゃんにもネットで発信してもらって」
言ってから、はっとした。私はまた図々しく提案してしまった。
「とっさにアイディアが出てくるの、すごいねえ」
叡子さんはにこにこしている。ほんとに菩薩みたい。
突如、スマホが大きな音を鳴らした。この低い警告音、ろくなお知らせじゃない。
通知を見て、私は顔をしかめた。
「なんやった?」
「土砂災害警報です。レベル4だそうで。該当の地域はすぐに避難しないといけませんけど、ここは大丈夫そうです」
周りは山と川だから、この手の災害は起きやすい気がする。
「みんなが心配やわ」
叡子さんがこぼしたとき、電灯が急に消えた。
「停電!?」
外光が入るから真っ暗ではないけれど、暗い。
ジリリリリン、と大きな音が鳴った。
びくっと震える私を置いて、叡子さんが黒電話の受話器を取り上げる。
あれって現役だったんだ? 停電してても鳴るんだ?
「はい、ドライブイン奥美濃……ああ、花代子。え、土砂崩れで停電?」
私の耳がぴくっとした。全神経をそばだてる。



