おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「油絵、意外性があっていいね。希絵ちゃんが描いたの?」
「おいしそうでしょ! でも絵の具の匂いがきついから、今日だけ。小里江さんに見せたかったの」
「そっか、ありがとう」
 確かに飲食店に匂いのきついものはよくないもんね。
 記念に写真に撮ってから、希絵ちゃんに聞いた。
「ネットに上げてる?」
「ぜんぜん」
「もったいないよ。お店のアカウント作って発信したら? ゼロ円でできるよ」
「やるやる!」
 席についた希絵ちゃんはさっそくアカウントを作り始めた。
 叡子さんは厨房に行き、料理を始める。
 しばらく待って出てきたそれに、私は目をかがやかせた。
達筆な字で文章が書かれた乳白色の四角いコンロの上に黒い陶板があり、朴葉と具材が載っている。この葉っぱ、私の顔より大きい!
朴葉は燃えにくくて殺菌作用もあるから、昔からよく使われてきたという。青葉を使う朴葉寿司とは違って、落葉した葉を使う。
朴葉にはみりん、砂糖、酒で味付けした(こうじ)味噌が塗られ、さしのはいった赤い牛肉、しめじ、笹切りのネギが載っている。朴葉の香りが移った味噌が焼けて、香ばしい。ふつふつと焼ける様子に思わずごくりと生唾を飲み込む。じゅうじゅうと焼ける音で、耳からおいしい。
「焼けるのが待ち遠しい」
 いただきますをして、同時に出された明宝ハムをほおばると、希絵ちゃんは笑った。
「くいしんぼやん」
「人はみなくいしんぼだよ」
 でなければあんなにグルメ情報がネットに飛び交ったりしていない。コンビニ各社も新商品の開発に血眼だ。
 一緒に明宝ハムを食べていた希絵ちゃんの前に、けいちゃん焼きが運ばれてきた。
 彼女は写真に撮って、スマホを操作する。
「見て見て、アカウント作ったわ」
 第一弾の写真はこの店の一押しとしてけいちゃん焼きが映っている。