おいでんさい、ドライブイン奥美濃! ~悪女は猫店長の手を借りて幸せ出張めしの恩返しをする~

「こんにちは。大変ですね」
 私は車を降りて声をかけた。直後、猫は叡子さんの陰にかくれる。
「ようおいでんさった。希絵ちゃんから聞いとるよ。打合せやよね。よろしく」
 叡子さんが笑顔になり、私もにこっと笑みを返した。
 猫にそうっと手を伸ばすと、猫パンチをかまされた。爪が出てない優しいバージョンだったけど、歓迎されていないらしい。
 私は猫ちゃんをさわるのをあきらめた。
「草むしり、どうしてコンビニ側を?」
「ご近所さんだもんで、ついでやし」
 すっごいいい人じゃん。
 あの店長のことだから、お礼も言ってないんだろうな。叡子さんの人のよさにつけこんで、腹が立つ。
「小里江さーん!」
 自転車に乗った少女が勢いよく走ってきて、ききっと急停車した。希絵ちゃんだ。上気した肌はつやつや。目に生気があふれている。
「待った?」
「ぜんぜん」
「おばあちゃん、お店を開ける時間でしょ」
「そうやね」
 よっこらしょ、と叡子さんが立ち上がる。
「小里江さん、今日は何食べる?」
 希絵ちゃんに聞かれ、私はこの前見たメニューを頭に浮かべる。
「どうしよ。どれもおいしそう……」
朴葉(ほおば)味噌焼きは?」
 朴葉味噌焼きはここよりも北、飛騨地方の郷土料理だ。
「それにする! あと、明宝ハム!」
「私も明宝ハム食べよっと」
 希絵ちゃんと叡子さんと一緒に店に向かった私は、入口にあるイーゼルに驚いた。おかれたキャンバスにはおいしそうなけいちゃん焼きが描かれている。