翌日には両親と圭吾が帰ってきて、目の前にはお土産がわんさか積みあがっていた。
「すごい量だ……」
「沢山買ってきたのよ! これもこれもこれも……全部二人に!」
母さんから渡されたのは真っ白くてまん丸い鳥のフマエナガのぬいぐるみやキーホルダー、お菓子などだった。
こんな可愛らしいの……ぬいぐるみは部屋に置けばいいけどキーホルダーはどうしよう。
手のひらに置いてジッと立ち尽くす俺に零時が、
「一緒に鞄に着けようよ」
と輝かしい笑顔でそう告げてきた。
背後から後光が見える。
でもそれで零時が喜ぶならいいか……そう思い、一緒に鞄に着けることにした。
「お揃いって恥ずかしくない?」
「全然! むしろ嬉しいけど」
「ならいいけど」
こっちはかなり照れるのを堪えているんだけど、肝心の兄は鼻歌交じりでただただ嬉しそうだ。
こんなに喜んでもらえるとは。
「んふふっ。 明日学校に行くのが楽しみだな~~」
「大げさ」
零時があまりに喜ぶから母さんも嬉しくなって、フマエナガのグッズを零時に沢山押し付けていたけど、それについては後ほど圭吾いきになったのは母さんには言えないな。
そして翌日、お揃いのキーホルダーを着けて学校に行き、学校では中間テストの結果が続々と返ってきたのだった。
「誠吾、どうだった?」
手応えを感じている真は俺の席にやってきて、中間テストの結果を聞いてくる。
だがしかし——。
「けっこう良かった!」
「どれ……」
真に答案用紙を見せびらかすと、変に茶化すこともなく一緒に喜んでくれた。
「おお、だいたい80点以上取れてたのか。 すごいな」
「真は?」
「俺もほとんど90点以上取れた」
「え! 真の方が全然凄いじゃん!」
「いや……零時さんのおかげじゃね」
「それな。 お礼言わないと」
なんだかんだ勉強会で零時が教えてくれたところがかなりテストに出たから、英語と数学は本当に助かったんだよね。
「帰りにやって来るだろうから」
「そだね」
多分零時のことだからまた放課後に教室に来るだろうということで、二人で教室で待ってみることにした。
けれど——。
一向に零時がやってくる気配がない。
いつもなら一目散にやってきて一緒に帰るってうるさいくらいなのに。
「来ないな」
真の言葉や教室の中に人がいなくなっていくたびに、変な焦りのような気持ちが沸いてきた。
あの人が放課後に来ないなんてこと、今までになかったから。
俺、何か変なことしたんだろうか。
今朝の登校時は普通だったはず。
散々避けたりしておいて、向こうから来なくなると焦るとか……自分が性格悪すぎて嫌になる。
「……零時の教室行ってみるか」
「そうだな」
でも教室に行くまでもなく、途中の廊下で鞄を背負いながらゴミ箱を持った兄の姿を見つけ、ホッと胸を撫でおろした。
掃除当番だったのか。
鞄背負ってるし、終わったらすぐこっちに来るつもりだったのかな。
お揃いのキーホルダーが目に入ってきて、なんだかこそばゆい気持ちになった。
とにかく喜び勇んで声をかけに近寄ろうとしたけど、すぐに零時の周りに人が集まり、近寄れなくなってしまう。
さすがに上級生の間を割って入る勇気はなくて、真と顔を見合わせてその場を離れようとした。
その時、聞きたくもない会話が耳に入ってきてしまう。
「わ~~このキーホルダー可愛い!」
「弟とお揃いなんだ」
「フマエナガ! 田辺くんとお揃いなんて弟くんが羨ましい」
なんだか聞いてはいけない会話のような気がするのに、そこから離れることができない。
足が地面に張り付いたように動かないのだ。
自慢げに俺とお揃いだと言う零時の言葉に嬉しい反面、零時と一つ屋根の下で一緒に住みたいとか、兄弟になりたいみたいに言ってる上級生の女子の言葉に嫌悪感を抱いてしまう。
それはダメ。
絶対に譲れない。
そう思ってたんだけど——
「再婚だから……兄弟がほしかったとかじゃないんだけど。 でも——……」
零時の放った言葉に頭をガツンと殴られたような気がして、凍り付いてしまう。
そうか、そうだったよね。
不本意だったのは俺だけじゃない。
零時だって親の再婚で兄弟ができるなんて、望んでいたわけじゃない。
でもずっと仲良くしようと頑張ってくれていて……。
「誠吾……?」
真が顔色の悪い俺を心配そうに覗き込んでくる。
大丈夫だって言いたいのに言葉が出てこない。
零時が頑張ってくれていたのは分かってる。
分かってるけど……あんなに甘やかしてきて、構ってきて、兄弟がほしかったわけじゃないって言わなくてもいいじゃん!!
くそ……っ!
前なら俺だってお前なんか嫌いだって、兄弟になんかなりたくなかったって思い切り言えたのに。
今はどこに気持ちを持っていけばいいか分からない。
大事な存在だって思った瞬間に……。
「今日は先に帰ろ」
「え……いいのか?」
「いいんだよ」
戸惑う真にぶっきらぼうに告げ、先に帰ろうと玄関口へと向かうことにした。
さすがに今会ってもどんな顔をすればいいか分からないし、上手く会話できないだろうから。
真の腕を引いて二人で靴箱にたどり着き、靴を履き替えていると、突如見知らぬ上級生たちがやってきて囲まれてしまうのだった。

