最悪なブラザー。~大嫌いだった先輩が、ひとつ屋根の下で兄弟になりました~


 放課後、予定通り近所のスーパーに寄り、さっそく食材を買おうと野菜売り場をウロウロする男子高校生2人……絶対周りの大人に怪しく思われているよね。

 そんな事を気にしていても仕方ないと思い、零時に今夜の献立を聞く事にした。
 
 
 「今日は何を作るの?」

 「うーん。 簡単なところで肉じゃがを作ろうと思ってるんだけど……もう一つ何か作りたいなぁ」

 「肉じゃが作れるんだ?! すごい……!」


 高校二年生の男子が肉じゃが作れるって……思わず顔と言葉に出てしまう。

 いや、でも本当に凄いな。

 
 「誠吾に初めて褒められた!」

 「……そう?」

 「そうだよ! もっと褒めて!!」

 「ウザッ! とにかくもう一品考えよう」

 「そうだね…………」


 しょんぼりの仕方があからさま過ぎる!

 そんなに俺に褒められるのが嬉しかったのか?

 あまりにも背中を丸めて悲し気なので、やはり俺の方が折れて、ほんの少し褒めてあげることにしたのだった。


 「……兄貴、すごいじゃん」

 「誠吾~~~好き!!!」

 「外でそういうのヤメてよね!!」


 あ……しまった——。

 自分で言ったあとで失敗したと思った。

 案の定目の前のモンスターは、しめたと言わんばかりにニヤリと笑っている。


 「いや、違うんだ……外でって言ったのは……」

 「外じゃなければいいんだね~~じゃあ、今日は家でいっぱい言おうっと」


 もう本当にこれは地獄の始まりかもしれない。

 俺の気持ちを他所に、零時はご機嫌で野菜を選び始める。

 じゃが芋や人参を選ぶ手つきがとても慣れていて、そんなところにも驚いてしまう。

 料理をしていたっていうのは本当なんだ——。

 そしてキャベツの1/4もさり気なくカゴに入れたので、何に使うのかを聞いてみた。


 「キャベツって肉じゃがに入れないよね?」

 「ふふっ、そうだね。 さすがに入れないかな」

 「何に使うの?」

 「コールスロー作ろうと思って」

 「コールスロー……」


 それは俺の大好物のおかずだ。

 偶然?

 ……母さんが話してたのを聞いてたのかなって思ったけど、普通そんなの聞き流したり真剣に聞いてないと思う。

 なんだろう……知っていたとしたら嬉しいんだけど、むずがゆい——。

 でも食べたいな。

 零時が作ったコールスロー。


 「いいね、コールスロー」

 「誠吾、コールスロー好きだもんね」


 得意げな顔。

 やっぱり知っていたんだ……ドヤ顔してるけど、何だかもう腹立たしく思わなくなっている自分がいる。

 
 「うん、好き」


 本当に自然に言葉が口から出ていた。

 前の俺だったら強がって認められなかっただろうけど……でもすぐにそれを後悔することになる。

 俺の言葉を聞いた零時が、キャベツをどんどんカゴに入れ始めたからだ。


 「ちょっ! 入れすぎだよ零時!!」

 「だって誠吾が好きって!!」

 「バカ零時! アホ兄貴!! 加減ってものを知らないの?!」

 「もっと好きって言って、誠吾!!!」

 「~~~っ! やっぱりお前なんてキライだっ!!」

 「そんな~~~!」


 散々スーパーで騒いでしまって恥ずかし過ぎて、必要な食材をそそくさと購入してスーパーを後にした。

 零時とスーパーに来るのは危険だ……!

 でも、いつものやり取りとは言え「嫌い」と言ってしまったことに、若干胸が痛む自分がいる。

 本当はもう嫌いじゃない。

 零時がとても優しくて、気遣いができる人間だってことはもうよく分かっているから。

 でもまだ認めたくない自分もいて……やっぱりここから前に進むには、あの時の事を解消する以外ないのかな。

 これから二日間は2人きりなので、思い切って小学校時代の事を聞いてみようかと、密かな思いを抱きつつ帰宅した——。