両親と圭吾が新婚旅行に行くのは俺と零時の中間テストが終わってからなので、安心して行ってもらいたいからテスト勉強を頑張らなくてはと一人意気込んでいた。
父さんにも初めて自分の成績を見せるし、だらしない成績は見せたくない。
ウチの高校の偏差値は低くはないから中学校時代もそれなりの成績をおさめていた自負はある。
でも高校での勉強はまた一段とむずかしくなっていて……どこまでついていけるか未知数だ。
初めてのテスト勉強期間が始まり、あまり思わしくないテスト勉強具合に愚痴が止まらなくなる。
「どうしよ……特に数学と英語がヤバい」
「英語なら教えてやれるけどなー。 数学は無理」
「真って英語得意なの?」
「まぁ昔レッスンに通ってたこともあるしな」
「へぇ……って、じゃあ英語だけでも教えてよ!」
「いいよ」
「よし!!」
真にゴリ押ししてテスト勉強の約束を取り付け、ガッツポーズをする。
これで英語も少しは点数が上がるだろう……さっそく家に来てもらうことになり、その日は一緒に帰ることにした。
真とは全く家の方向は違うから、帰る時間は気を付けなきゃ。
最近は美術室に寄って帰っていたから、そこに顔を出す零時と強制的に一緒に帰ることが増えていたけど……今日は一緒には帰れないな。
喜ぶべきことだ。
久しぶりにアイツから解放される……そのはず、なのに。
なんであんまり嬉しくないんだ。
電車の車窓からの景色を眺めていても、あーだこーだと話しかけてくる人間がいないんだから……解放感に浸ってもいいのに。
以前の俺ならめちゃくちゃ喜んでいたのにな。
いつの間にか当たり前になっている事が、急に怖くなる。
「誠吾?」
一緒に電車に乗っている誠が、何も話さない俺の顔を覗き込んで心配してくる。
初めて高校の友達と一緒に帰っているんだし、楽しむべきだった。
「あ、ごめん。 ちょっとボーっとしちゃってた」
「大丈夫か? 根詰めすぎなんじゃねーの?」
「ははっ。 そうかも」
「英語もぼちぼちにしておこうぜ」
真の言葉に頷くと、頭をポンポンしてくる。
真って本当にいいヤツだ……きっと母さんは友達を連れて帰ったら喜ぶだろうな。
小学校時代も中学校時代もあまり友達を家に連れて来たことがないから。
今も電車に乗りながらRINEしてるけど、凄い勢いでスタンプが送られてくる。
「俺ん家来たら、母さんがめちゃくちゃ話してくるかも……」
「え、そういう感じ?」
「うん。 だって、ほら。 見て……」
少し恥ずかしいけど真に母さんとのRINE画面見せたら、案の定吹き出して爆笑されてしまう。
「ぶはっ! 誠吾のお母さんも強烈……すごいスタ連。 ははっ」
「ごめん。 強烈な家族ばっかりで」
「いや……くくっ……おもしろ……っ」
もう穴があったら入りたいくらい恥ずかしい。
でもこんな風に明るい母さんだから、俺たち兄弟を一人で明るく育ててくれたんだって分かってるから、真が気に入ってくれてるみたいで嬉しかったりもする。
そうこうしている内に家に着き、玄関の扉を開くと、すぐそこに母さんが待機していたのだった。
「おかえりなさい、誠吾! いらっしゃい、真くん!」
「こんにちは。 お世話になります」
「母さん、ただいま。 じゃなくって! ずっとそこで待機してたの?!」
「そりゃそうよ~~誠吾がお友達を連れてくるなんて……居ても立っても居られなくて!」
「はははっ」
真に派手に笑われ、恥ずかしくて死にそうだった。
母さんはもっと話がしたそうだったけど、とにかく真の背を押しながら自室へ連れて行き、何とか事なきを得た——。
「はぁ——……ごめんね」
「いや……すげー面白かった。 でももっと強烈なのがいるだろ?」
「あ——もうすぐ帰ってくるかも」
俺がそう言うか言わないかで、階段を駆けてくる音が聞こえてくる。
「もう帰ってきていた……」
——バンッ!!——
「誠吾! 友達が来てるって?!」
「ははっ」
血相を変えて部屋に飛び込んできた零時に、それを見て笑う真。
そして深いため息をつく俺——。
なんなんだろう、この状況。
「真に英語を教えてもらう為に家に来てもらってるんだ。 ちょっとうるさくしたらごめんだけど、零時は部屋で……」
「勉強なら僕が教えたのに!」
「いや、普通は友達に頼むでしょ」
「兄弟でしょ!!」
「ふはっ」
俺たちの押収にたびたび吹き出す真……もう埒が明かない感じがする。
やっぱりさっき、零時から解放されて素直に喜ぶべきだった……!
結局全く引き下がらない零時を見兼ねて真が一緒にやろうと言い出し、なぜか3人でテスト対策をすることになったのだった。

