顔合わせ当日。
先に着いていた僕と父さんは、高級ホテルの個室で京子さんたち家族を待つこと10分ほどで、個室の扉が開いていく。
「遅くなってごめんなさい……!」
「いや、全然待ってないよ」
父さんと京子さんが言葉を交わす。
その後ろから2人の子供が遠慮がちに入ってきて……誠吾は僕と目が合い、しばらくの間かたまっていた。
高校1年生になった彼は背も伸び、もう少女とは思わない見た目になっていたけど。
僕には最初に出会ったあの時のまま、綺麗なままで、思わず彼の頬に手を差し出してしまいそうになる。
すぐ近くに、触れられる距離に彼がいる。
それだけでも嬉しくて……気持ちが爆発してしまいそうになるのを必死にこらえた。
彼の方もあまりに凝視してくるので何か言葉をかけないとと焦りがやってくる。
でも前みたいにぎこちない関係はイヤだな……彼にも気安く話してもらいたくて、ワザと軽い感じに話しかけてみた。
「こんにちは。 また会えて嬉しいよ、誠吾くん」
僕の言葉にどういう反応を示すだろうと思って見ていたら、みるみる顔が赤くなっていって、明らかに動揺し始めたのだった。
「なっ……ど、どうして……あんたが、ここに?!」
あまりに素直な反応に心の底から嬉しくて、面白くて、笑いがこみ上げてくる。
「あははっ! どうしてだろうね?」
「……~~っ!! 俺が知るか!」
「はははっ」
楽しい……!
こんなに心の底から笑ったのは初めてかもしれない。
ここまで正直に感情をぶつけてきてくれるなんて……嬉しくて嬉しくて、この場で抱きしめてしまいそうだった。
きっと君にとって僕との再会は、良いものとは言えないだろうけど。
僕にとってはとても幸せで、泣きたいくらい嬉しいものだった。
父さんと京子さんも口裏を合わせてくれて、知らないフリをしてくれている姿にまた笑いがこみ上げてくる。
「いや~~~まさか息子同士が知り合いだったなんてな!」
「本当に! 小学校が同じだとは思っていたけど、こんな事もあるのね!」
二人の会話を聞いた彼の方はと言うと、顔を真っ赤にしながら反論したいのを何とか耐えているようだった。
可愛い……こんなに顔に出るんだ。
出会った時の印象ははかなげで消えてしまいそうだったのに。
今もそれは変わらないけれど、話し始めると大きな目が揺れ動いて顔色がコロコロ変わる。
何より僕の言葉で彼の気持ちが動いているのがとても嬉しいし、もっと僕の言葉に感情が揺さぶられる姿が見たいと思ってしまう。
だから少しだけ浮かれてしまい、つい揶揄ってしまったりして。
「ねぇ、ねぇ。 僕たち兄弟だね。 嬉しい? 嬉しいよね?」
僕に話しかけられた誠吾の表情は、明らかに最悪と言っている。
でも僕にとってはそれすらも楽しくて嬉しいものだった。
今まで僕の周りにいる人は皆ご機嫌取りをしてくる人、恋する瞳を向けてくる人ばかりで、ここまで直情的に感情をぶつけてくる人はいなかったから。
それにどんなに嫌がられても、避けられても、もう僕の方から離れたりはしないし……逃したりもしない。
そう思うだけで僕の心は高揚していく。
「ねぇ、誠吾」
「…………っ!! ゲホッ! ゴホッ……名前っ!」
「いいじゃないか。 兄弟になるんだし」
「~~~っ!!」
「ふふっ」
「れいじ兄ちゃん。 ぼくは兄弟、うれしいよ!」
「そうか~~圭吾は優しいな!」
「へへっ」
圭吾は誠吾の小さいバージョンといった感じで、見ているだけで癒される。
この2人と兄弟になれたのは本当に幸せなことかもしれない。
誠吾は終始不満げだったけれど、父さんや京子さん、圭吾はとても楽しそうで、もちろん僕も幸せいっぱいの顔合わせになったのだった。

