コンビニで買いこんだ食べ物はいつもと同じものばかりだ。
どこの場所でも安定の味は、千尋に安心をくれる。
館内着に着替えて、すぐに大浴場に行ったせいか、足の痛みも和らいだ気がする。
ちなみにここで大事なのは、要冷蔵の食べ物は買いこみ過ぎないこと。
推し活でホテルに宿泊した際、何度か千尋はこれで痛い目を見た。冷蔵商品はその日で食べきる必要があるのだ。
そのため、今日買ったのはホットスナックとサラダ、持ち帰れるグミや乾物だけだ。
「本当に今回のホテルは大正解! 仙台のチェーンホテルか、全国チェーンか悩んだけど、大浴場は強いよねぇ。全国チェーンは安心安定の良さがあるし」
だらだらと缶のレモンサワーを飲みながら、ぼんやりとテレビを見る。
いつもの夜と全く変わらないのだが、ここは仙台で出張中だ。
どこかふわふわとして落ち着かないが心地よい。
推し活をしていたときも、出張中の今もこの感覚が千尋は好きだ。
日常の中にある非日常感がなんだかくすぐったい。
(そういう意味では出張は好きなんだけどね)
しかし、今回の出張で千尋の心には気になった言葉がある。
各書店を訪れたが、作家自体が元々仙台で学生時代を過ごしたという所縁もあり、書店員の反応も好感触であった。
POPや販促用のポスターを貼ってもらえる場所も無事確保し、千尋は安心していた。
だが、書店員との会話の中で気がかりだったのは書籍の売り上げの話題である。
書店自体に訪れる人が減少しているというのだ。
それは千尋としても昨今、感じている問題だが、一読者としても心苦しい。
なにか言おうとしたのだが、その場限りの言葉では信頼を失ってしまうだろう。
千尋はただ曖昧に頷くことしかできなかった。
「良い方法があればいいんだけどな……」
それこそ、千尋が今日仙台に訪れたのも書籍を書店で手に取ってもらうための仕事である。
書籍に限定のSSやポストカード、しおりをつけるのは当然そのぶん、コストはかさむ。
だが、少しでも本を知ってもらうために営業部も頭を悩ませたのだ。
当然、多くの出版社で同じことが行われている。
「あ、この牛タン美味しい。コンビニで買えちゃうなんてお得感だなー」
気持ちを紛らわすかのようにスライスされたおつまみ用の牛タンをつまみ、千尋はレモンサワーを飲み干した。


