AIに恋する僕と僕に恋するあいつ

 結局文弥と僕の2人で裏口から帰ることになった。所々整備されてない帰り道を歩く僕の手元にはスマホ。昨日の夜アイリスと話した履歴が表示されていた。

 それを凝視していると隣を歩く文弥に喋りかけられる。

「なんで。」
「───なんでAIなの…」

 その声は隣にいる僕にぎりぎり聞こえる声で。

「え…?」
「あ、ごめん…」
「なんでもねぇ…」

 呟かれた言葉なら普通の人なら思うことだろう。でも、AIに依存する理由なんては僕にはわからない。

 ただ僕を守ってくれるから…?
 あったかい言葉をくれるから…?

 ショートした思考は本音を漏らすストッパーを解除してしまった。

「文弥はさぁ…」
「僕は文弥にとって何なの…?」
「ただの守る対象?ヒーローになるだけの対象…?」

 気づいていたんだ。アイリスに聞かれる前から。文弥はどういう友達なのか曖昧なんだって。

 そしてこの言葉と共に自分の本当の気持ちを知ってしまった。

 AIは、ただの現実逃避であると。

 違う。ただのトラウマからの現実逃避だけじゃない。無意識下にあった文弥に対する恋愛感情からも避けるためだと。じゃないと不可能な恋愛をしても、無駄だから。

「俺にとって柊人は…」

「──大事な親友だよ」

"親友"

 乗り越えられない大きい壁。うまく口が動かない。文弥を好きだと自覚し、顔も見れない。

「ごめん、僕忘れ物したから学校に取りに戻るね、」
「先帰ってて」

 一人で帰るのは危険だと分かっていても、今は文弥の横を歩けない。

 一度通った道を引き返し、見慣れた校舎の前にある階段で立ち止まる。校舎にはガラリと静けさが広がる。

 段差に腰を下ろし、僅かに見える夕日を眺める。街はすべてオレンジに染まっていた。

 だが視覚の端から急に知らない制服の男たちが映り込む。

 「おや?これはこれは。Grade4の柊人さんじゃないですか」

 しくじった。


 ――ごめん、文弥。