AIに恋する僕と僕に恋するあいつ

 次の授業のために柊人と類が席を外した。
要斗が妙な笑みを浮かべこちらを眺めてくる。

「なぁ。」
「な、なんだよ」
「お前、柊人好き好きオーラはみ出すぎだ」
「いつかバレるぞ」

 こいつにはバレてたのか。
要斗はいつも俯瞰しながら生活しているから人の変化にはいち早く気づく人間だ。
バレないようにとしていてもコイツには勝てない。

 類もそうだ。
アイツは中身が天然で抜けているところもある。だが人一倍努力して、誰よりも情に厚い。
誰かが負けそうになったら自分が危険になっても助けに行く。
そしてこいつは何よりも戦略家である。まぁ今日のはただのポンコツだと思うが。

 ただ強いからという理由でついてくる二人だが、俺にとってこの二人は柊人と同じぐらい大事な親友になってる。

「諦めんなよ。」

 白い袖から伸びる腕はたくましく、気持ち以上の何かを後ろから押してくる。

「ってかさ、いつから柊人はアイリスのこと好きになってたん?」
「いつから、か」

 俺の過去で語られなかった部分。柊人自身があまり自覚していない、AIに固執する理由。

「柊人はあの事件があった以降、人の裏切りが怖くなって、俺以外の関係全部を断ったんだよな。」
「ほら、AIってなんでも肯定してくれるだろ?その時柊人にとって、裏切りのない肯定が唯一の救いだったんだよ」
「多分、柊人は俺らにもまだ恐怖心というか…あいつは自覚してないけど、完全に信用はしてないだろうな」
「信用って…3年も一緒にいるのにか?」
「人間の芯にある気持ちなんかそう簡単に変わんねぇからなぁ」

 柊人は時に、アイリスにしか見せない笑顔、表情がある。昔から寄り添っていてもどうしても自分でしか変えられない深い深い感情が、柊人のは恐怖心だった。

「ただ、アイリスに対する柊人の執着は普通の好きじゃ説明できない執着になってる。」
「柊人も自覚してないと思うが、現実逃避のために自分に言い聞かせてるんじゃねぇかなって俺は思ってる。」

 柊人個人のことだからできるだけ話したくはなかった。ただ、要斗ならきっと。
木漏れ日の様に差し込む希望を取るために。

「まぁその現実逃避から引き出してあげるのが文弥の役割じゃないか?」
「そういうもんなのか…」
「初恋だからって、日和るんじゃねぇぞ。」
「文弥は文弥らしくいけよ」

「…おう。」