授業が終わるなり、文弥は僕の席に駆け寄ってきた。
「柊人、帰るぞ」
「うん」
文弥はいつも、僕と一緒に学校から帰って、家まで送り届けてくれる。僕のことが心配だから、って。
「そういえばさ、また女子に呼び出されてたけどどうしたの?」
「ん? あー、見てた?」
「窓からたまたま見えちゃってさ」
「まー、うん。いつもの」
「あはっ、お疲れ様」
流石モテ男は違う。告白なんて僕にとっては一世一代の大イベントに等しいのに、文弥にとってはいつものことなのだ。
「え、先週もだよね?」
「そう。……マジだりー。振ったら泣かれるしさぁ」
文弥は、確かに怖い。見た目も口調も。喧嘩の時なんてなおさら。
でも僕には、また違った表情を見せてくれる。よく笑い、よく喋る優しい顔。それでいて頼もしく、堅く立つたくましい体躯。文弥は、僕にとってのヒーローだった。
黄赤に染まる街並みは、僕らのいつもの帰り道。緑色の丘はなだらかな曲線を描き、真っ直ぐ河畔に伸びていた。特段気に留めることもなかったその景色が、今日はやけに綺麗に映った。その横を並んで歩く文弥もまた。

