ヘソ天を夢見てる。

アパートの部屋は暖房を入れたままにしていたから、外から冷たい空気が入らないようにドアを小さく開けて中に入った。
ポストに入っていた手紙の束をテーブルに置いて、まずは洗面所でわちの足を洗った。
後ろ足は抵抗なく洗わせてくれるのに、前足は洗われるのが嫌いだからいつも少しばかり手こずるせいで、尻尾まで濡れてしまう。

「ごめんね、また尻尾が濡れちゃった」

床へ下ろすと、尻尾のことなんて気にせず、ぴょんぴょん跳ねて朝ご飯を催促するわちに、「お腹すいちゃったね」と声をかけながら朝ご飯を用意して、食べ終わるまでずっと見ていた。

ご飯を食べ終わったわちは、そわそわと部屋の中を歩き回った後、窓際に落ち着いて伏せをすると外を見つめた。
わちの高さでは外の景色は見えないはずだけれど、よくそうやって窓の方を見ている。
そんな不思議くんは、前足を舐めては自分の顔を猫みたいに撫で始めた。耳の方まで足を伸ばして撫でているので、痒いのかと指で掻いてあげたら、迷惑そうな顔をされて逃げられた。

わちは忙しいみたいなので、テーブルの上に置きっぱなしにしていた手紙の束を見ることにした。

ほとんどがマンションの広告や不用品を買い取るといったチラシ。
その中に、絵葉書があった。

それは早江さんからで、絵葉書はイギリスの風景写真ではなく、空にかかる大きな虹――

「しばらく帰らない。想世ちゃんもごちゃごちゃ考えてないで人生楽しんで!」

添えられていたのは、まるで今のわたしを見ているかのような言葉。
「あはは」と、早江さんみたいに大きな声で笑ったせいで、わちがこちらを向いた。

絵葉書にはホテルの住所が書かれていたので、返事を書くためにスマホの中の撮り溜めたわちの写真から、一番お気に入りの1枚を選んで、ネットでコンビニのサイトへ画像データを登録した。この作業は年賀状を印刷する時にもやったから手順を覚えている。
地元では車を出さないと最寄りのコンビニまで行けなかったけれど、こっちでは徒歩数分圏内にあるので、思いったったらすぐに印刷出来るから便利。

わちを見ると、ベッドに入って丸くなっていたので、そっと玄関を開けて外出した。