ヘソ天を夢見てる。

答えが何であろうと、誘わない選択肢はない。
言いたい言葉を飲み込んで、後悔ばかりしてきた。そんな後悔は二度としたくない。
片付けを終えてから声をかけた。

「もうすぐクリスマスだけど、一緒に――」

「ミヒャエル・エンデがある」

浅葱さんが話を遮るのはめずらしい。

「モモのこと? それ、子供の頃にクリスマスプレゼントで貰ったやつ」

浅葱さんが見ているのは、本棚の一番下に置いてある本で、ミヒャエル・エンデの「モモ」という本。

「東田さんには、この部屋にあるものを自由にさわれるひとがいるんですよね?」

正確には「いた」が正しい。
この部屋に出入りしていたのは晶しかいない。

「わたしに写真アプリのこと教えてくれた時、投稿された写真についてたコメントも読みましたか?」

「読んだよ」

ひっそりと投稿されていた料理の写真に、コメントはほとんどついていなかった。「美味しそう」「食べたい」といった当たり障りのないものが数件あるだけで、目を引くようなものはなかった。だから一通り全てに目を通した後は、わざわざタップして詳細を見ることは無かった。

「『ミヒャエル・エンデ』と書いてありました」

「そんなコメントはついてなかったと思うけど」

浅葱さんは自分のスマホで、詳細ページを見せてくれた。
確かに「ミヒャエル・エンデ」と書かれていたけれど、その続きはない。途中で書くのをやめたのか、間違えて書き込んだのかもしれない。

コメントの書かれているページはクリスマスらしく、チキンレッグの照り焼きと焼き野菜の写真が掲載されていた。

コメントの書かれた日付は――


晶が亡くなる……少し前。