ヘソ天を夢見てる。

これまで会社にいる時、わたしから話しかけたことはなかったけれど、電話にも出てくれないし、メッセージにも既読がつかないのだから仕方がない。
どうしてもチワワのことを早急に話す必要があるのだから、ルールを破らせてもらう。


会社へ着き制服に着替えると、すぐに営業部へ向かった。

でも営業部のフロアを見渡しても梶井くんはいなくて、しばらく廊下で待った。
こんな時、誰かに聞けばいいのだろうけど、話しかけられるようなひとがわたしにはいない。
同期の中でも話をするのは梶井くんくらいしかいなかった。
そのうち始業時間が近づいてきたので仕方なく人事部へ戻った。

スマホを見ても相変わらずメッセージに既読はついていなくて、昼休憩になったらもう一度営業部へ行ってみようと思いながら仕事を始めた。


お腹が痛い。


朝からの痛みの正体は生理痛で、もう10年以上付き合っているのに、この痛みだけは永遠に慣れそうにない。
世の中には全く痛みがない人もいるというのだから羨ましい。
薬を飲んでいても座っていることが出来ないくらい痛いのに、今日はその薬を飲む時間がなかった。痛くなってから飲むと効くまでに時間がかかるから、当分この痛みを我慢し続けなければならない。


部長が内線電話で誰かと話している。


薬が効くどころか、ますますお腹は痛みを増してくる。
熱いお風呂で全身を温めたいけれど、それは叶わない。昼休憩になったらカイロを買って来よう。お腹を温めたら少しはマシになるはず。
……でも昼休憩には営業部へ行って梶井くんを探さないと……
冷や汗が出るような感覚と一緒に、頭も働かなくなってきた。


電話を切った部長がなぜかわたしのところへやって来る。

「浅葱さんは、営業部の梶井正宗くんと同期だったよね?」

「はい……?」

わたしたちのことを知っているひとは誰もいないはずで、どうして部長から梶井くんの名前が出てくるのかわからない。

「今、彼のご実家から営業部の方へ連絡が入って……梶井くんが昨夜交通事故にあって、そのまま病院で息をひきとっ――」


最後まで聞く前に、意識を失った。