ヘソ天を夢見てる。

片付けを済ませると、コーヒーを淹れるからとソファを勧められた。

本当に、細かいことにこだわるようで、自家焙煎まではしていなかったけれど、豆にはこだわっているという話をしてくれた。
東田さんが、注ぎ口の細長いケトルでフィルターにゆっくりとお湯を注ぐ姿は、おしゃれなカフェのバリスタみたい。

この部屋もシンプルながらインテリアに凝っている。一体何の仕事をしているひとなんだろう……


「どうぞ」

東田さんはコーヒーのカップをローテーブルに置くと、向かい側に座った。

「ありがとうございます」

東田さんが豆を挽き始めたところから部屋中にコーヒーの香りがしていたけれど、目の前に置かれると、それが更に際立つ。
一口飲むと、酸味が少なく、すきりとした苦みが広がる。決してコーヒー通ではないけれど、美味しいと感じる。

「美味しいです。ボキャブラリーが少なくて申し訳ありません」

「その言葉だけで十分です」

カップをテーブルに置き、頭を下げた。

「怪我のこと、本当に申し訳ありませんでした」

「真面目すぎ。気にしてないのに。ワチは人が怖いんですか?」

「人も動物も苦手みたいです。小さい頃にあちこち連れて行ったんですけど、慣れるよりストレスになっていることに気がついて、それ以来、彼のペースに合わせています」

「人間と一緒ですね。誰もが対人関係を得意なわけじゃない」


東田さんは、わちが尻尾を振らないと言ったら何と言うんだろう?


「……わちは……尻尾を振らないんです。全くというわけじゃないんですけど、たまーにしか振らないんです。だから振ってくれた時はすっごくテンションあがります」

「やばいですね」

小箱さんに連れて行かれた合コンで言われた「変じゃない?」という言葉を思い出した。


何を……期待したのかな……
言うんじゃなかった。
自分で聞いておいて、落ち込むなんて馬鹿げてる。


「人間で言うところのツンデレ? 浅葱さんはワチにベタ惚れなんですね。と言うのは冗談で、いろんな性格の子いてもおかしくないと思いますよ」

例え社交辞令だったとしても、その言葉が嬉しくて、顔がほころぶのを隠すようにコーヒーを口に運んだ。