ヘソ天を夢見てる。

「こっちです」と、案内されたリビングダイニングにあるアイランドキッチンを見て、さっきまでの緊張がどこかへ飛んでいった。

「作業台が広いですね! 流しのスペースもうちの倍あります!」

2人並んで立ってもまだ余裕があるくらい広い。

「気に入ってもらえて良かった。栗は水につけて2時間は経ってるから、すぐに始められますよ」

キッチンの作業台の上に一般家庭では目にしないくらいの大きなボウルが置いてある。

「栗ごはんの栗は焼き栗にしますか?」

「焼き栗?」

「実家の母が有名な料理家の人のレシピを見て作って以来、うちでは定番なんです」

東田さんは何か考えているかのように、大きなボウルの中の栗を見つめたまま言った。

「焼き栗を使った玄米栗ご飯はよく作るんですか?」

前にも同じような質問をされた気がする。玄米が気になるのかな……それともやっぱり白米がいいという気持ちの裏返し?

「普通の栗にしますか?」

「食べたことがないから、焼き栗のを食べてみたい」

同じようにボウルを覗きこむと、中にはたくさんの栗が水につかっていた。
東田さんがさっきから、ずっと栗を見てるのは、「これを全部どうしよう?」とか考えているからなのかな……

「これが全部ですか?」

「はい。何か?」

「本当にたくさんあるみたいですね。渋皮煮も作りますか?」

「それは苦手なので、栗ご飯に使わない分は、甘露煮にするので早江さんに渡してもらえませんか?」

東田さんは「甘露煮にして」ではなく「甘露煮にする」と言った。
彼は料理をする人だ。
キッチンに立つと、そこがお飾りではないことが改めてよくわかる。

「では、まず栗を剥きましょうか」

「はい」

持ってきていたエプロンをしていると、東田さんもエプロンをしていた。
その姿はキリッとしていてかっこいい。