一緒に栗ご飯を作るなんて安易に約束をしてしまったけれど、その日が近づくにつれ、落ち着かなくなった。
何度も断ろうと思いながらも、わちの作った傷が頭に浮かび思い直した。
そして当日を迎えた今は、先ほどから東田さんのマンションの前でうろうろと不審者のような動きをしている。
マンションから出てきた人が怪訝そうな顔でわたしを見ながらすれ違うのを見て意を決した。このままこうしていたらますます怪しまれる。
大きく深呼吸をしてして、エントランスに足を踏み入れた。
「Arc-en-ciel」と書かれた銅のプレートが貼られたドアの前まで来たら、今度はインターホンのボタンを押す勇気が足らない。
配達に来た時は躊躇することなく押せたのに、ボタンまであと数センチというところで指が固まっている。
「押さないの?」
いきなり背後から声が聞こえて、びくりと心臓が跳ねた。
振り向くと東田さんがいる。
「そんなに驚かなくても。たまたま郵便物を見に下へ降りて戻って来たとこです。待たせてしまいました?」
「いいえ、今、今、来ました」
「そ。良かった。重そうだけど、何が入ってるんですか?」
視線がわたしのトートバッグに注がれている。
「玄米と、実家からかぼちゃを送ってきたから持ってきました。こちらで煮てもいいですか?」
「もちろん」
「持ちます」と、トートバッグをわたしの手から取ると、東田さんはドアの鍵を開け、「どうぞ」と逃げ道を塞いだ。
与えられた選択肢には、「お邪魔します」と言うことしか残されていない。
何度も断ろうと思いながらも、わちの作った傷が頭に浮かび思い直した。
そして当日を迎えた今は、先ほどから東田さんのマンションの前でうろうろと不審者のような動きをしている。
マンションから出てきた人が怪訝そうな顔でわたしを見ながらすれ違うのを見て意を決した。このままこうしていたらますます怪しまれる。
大きく深呼吸をしてして、エントランスに足を踏み入れた。
「Arc-en-ciel」と書かれた銅のプレートが貼られたドアの前まで来たら、今度はインターホンのボタンを押す勇気が足らない。
配達に来た時は躊躇することなく押せたのに、ボタンまであと数センチというところで指が固まっている。
「押さないの?」
いきなり背後から声が聞こえて、びくりと心臓が跳ねた。
振り向くと東田さんがいる。
「そんなに驚かなくても。たまたま郵便物を見に下へ降りて戻って来たとこです。待たせてしまいました?」
「いいえ、今、今、来ました」
「そ。良かった。重そうだけど、何が入ってるんですか?」
視線がわたしのトートバッグに注がれている。
「玄米と、実家からかぼちゃを送ってきたから持ってきました。こちらで煮てもいいですか?」
「もちろん」
「持ちます」と、トートバッグをわたしの手から取ると、東田さんはドアの鍵を開け、「どうぞ」と逃げ道を塞いだ。
与えられた選択肢には、「お邪魔します」と言うことしか残されていない。



