ヘソ天を夢見てる。

それは一瞬の出来事。

あっ!と思った時にはもう遅くて……

どうしてこんなことにっ!!



――遡ること15分前――



わちの朝散歩をしていたら、前からパン屋の袋を持った「びくり唐揚げのお客さん」が歩いて来た。
そこのパン屋さんはわたしも好きで、特にクリームチーズとラズベリーの入ったふわふわのやつがお気に入り。

リードがピンっと張ったので下を向くと、さっきまで普通に歩いていたわちがお座りを決め込んでいた。こうなるともう動かないので抱っこするしかない。

どうやらその仕草が目に止まったらしく、わちを抱き上げたところで、お客さんと目が合った。

「おはようございます」

「おはようございます」

「その子がワチ?」

「はい」

「さわってもいいですか?」

「ごめんなさい。この子は慣れた人じゃないと噛むので危ない――」

言いかけたところで、どうしてなのか、いきなりお客さんがこちらに向かってつんのめった。
そのせいでお客さんは、よりにもよって思いっきりわちの目の前に顔を近づけることになり、あっ!と思った時にはもう遅くて――

がるるっという唸り声の後、わちがお客さんの鼻に噛みついた。

「わち、だめ!」

「――っ痛……」

「ごめんなさい! 大丈夫で――血が……」

わちがガッツリ噛んだせいで、お客さんの鼻から血が出ている。

「どうしよう……血が……」

わたしの「血が」という声に反応したお客さんは自らの手で鼻をさわり、指についた血を見た。
すぐにわちを下へおろし、持っていたウェットティッシュをポケットから出すとお客さんに渡した。

「ごめんなさい! これ、アルコールが入っていないやつです」


どうしよう……大変なことになってしまった。