ヘソ天を夢見てる。

駅前のスーパーは、スーパーと言っても2階建ての建物で、1階が食料品売り場、2階が衣料品売り場となっていて、入口を入ってすぐのところにはフードコートがある。


中学に入ってすぐの頃、そこで成とソフトクリームを食べているのを同じクラスの男子に見られた。
次の日学校へ行くと、黒板にハートマークと一緒にソフトクリームの絵と私と成の名前が書かれていて――
急いで消そうとしたタイミングで、成が教科書を借りに来てそれを見た。

『俺と晶?』

あー、言っちゃった。
人前で名前呼びとかまたネタを提供するようなことを……

『これ書いたやつバカだな』

鼻で笑った成に書いたやつが突っかかった。

『オレはこの目で見たんだからな!』

『樋野の樋が間違ってる。点が二つの二点しんにょうが正しい』

成は黒板のしんにょうに点を一個足すと、何事もなかったかのように「晶、数学の教科書貸して」と話しかけてきた。

教科書を渡す時「ごめんね」と謝ると、成は「何が?」と本当に何のことかわからないでいるように見えた。

『黒板の。あんなふうに書かれて……』

『別に。事実じゃん』

どきんとした。

『ソフトクリーム食ったし』

今度はちくんと胸が痛くなった。
成が「事実」と言ったのは、ソフトクリームの方。

成は私の手から黒板消しを取ると、落書きをきれいに消して教室を出て行った。
その態度があまりにも冷静だったから、クラスの男子からそれ以上からかわれることはなかった。


「晶?」

成は既に店の入り口の前にいて、私を待っていた。

「ごめんっ」

私が行くのを待ってから成は店に入ると、ホワイトデーコーナーの方には見向きもせず、真っ直ぐに食料品売り場の方へ向かった。

「なぁ、お返しにもらってがっかりするやつどれ?」

「あそこで山積みになってる、幼児向けキャラクターの絵がパッケージのお菓子とか?」

「ふうん。じゃあそれにする」

「へっ?」

「ひどいもん返した方がテンション下がるだろ?」

成はお菓子が積まれたコーナーへ行くと、そこから4つほど手に取った。
つまり、バレンタインには私を入れて4人からチョコをもらったということ。

敢えてなのか、成はそのお菓子を一緒に買ったスーパーのロゴの入った袋に一つづつ入れると、無造作にリュックへつっこんだ。

普段はスマホしか持ち歩かない成がリュックを持って来ていたのは、どうやらこのためだったらしい。