ヘソ天を夢見てる。

成は毎年必ずバレンタインのお返しをくれる。


ホワイトデーの日の朝、窓越しに成から誘われた。

「買い物付き合って」

「いいよ。どこに行くの?」

「駅前のスーパー。玄関の前で待ってる」


成のばかっ!
昨日の夜に言ってくれればいいのに!

デートじゃないし、家から10分くらいのスーパーだけど、せっかくふたりで出かけるなら、少しでもかわいいと思われる格好で行きたい。

急いで支度しながら、ふと、駅前のスーパーへ行くのにおしゃれなんかしたら変に思われるよね……と冷静になって、簡単なメイクをして、無難な服に着替えた。
猫っ気の髪は整えるのに時間がかかる。成を待たせるのも悪いから、あきらめてひとつにまとめて結んだ。


玄関を出ると、リュックを片方の肩にかけた成が待っていた。

「ごめん、待った?」

「別に。早く家を出過ぎただけだから」

セリフだけ切り取ったら、まるでデートの待ち合わせをしていたカップルみたい。
油断するとゆるむ頬を引き締めて、先に歩き始めた成の後を追いかけた。

「何を買うの?」

「ホワイトデーのお返し」

あの中2のバレンタイン以来、成はチョコを受け取るようになった。
中3の時は卒業してしまったから、その子達にお返しはしなかったようだけれど、今年は用意するということ。

「スーパーで買うの?」

「いいじゃん、別に」

「それ、私が必要?」

「暇してたんだろ?」

「いつも暇ってわけじゃないんだよっ。決めつけないでよね」

文句を言ったのに成は笑っていた。

暇じゃなくてもついて行ったけどね。