ヘソ天を夢見てる。

少し時間をおいてからインターホンを鳴らすと、先程冷たい音を立てて閉まったドアが静かに開き、再び成が顔を出した。

「回覧板持って来た」

「晶に覗きの趣味があるとは思わなかった。さっき見てたろ? 隠れてたつもりかもしれないけど気づいてました」

「……あの子、泣いてたよ」

「だから何? 受け取れって?」

「……受け取るくらいは……」

「わかった。晶がそう言うなら次から受け取る」

成は不機嫌そうに、私が持ったままでいた回覧板を奪った。

「持って来たのは回覧板だけ? 晶のチョコは?」

「部屋にある」

「じゃあすぐ取りに行くから、帰って窓開けてよ」

「このまま一緒にうちい来ればいいのに」

「面倒。じゃあ、あとで」

ドアが静かに閉まるのを見て、急いで自分の部屋へ戻った。


私の部屋と成の部屋は向かい合っていて、いつも成はベランダを飛び越えてやって来る。
うちの親と成の親は、私達が一緒にいることを当たり前のように思っているので、「親に隠れて会うため」というわけではない。単純に玄関から行き来するより楽だかららしい。
それが私達の日常だった。

保育園も一緒で、小中も学区が同じだから当然同じ。高校は「どこ受験する?」と聞かれて、答えたら「じゃあ俺もそこにする」といった具合に、同じところを受験した。



今思えば、成は私に合わせてランクを下げてくれたんだとわかる。
でもその時はそんなこと考えもしなくて、単純に同じ高校へ通えることを喜んだ。