ヘソ天を夢見てる。

海外のバレンタインは、男性から女性に贈り物をする日らしい。
日本では女性から男性にチョコをあげて、自分の気持ちを伝える。


私以外にも、(なり)へチョコを渡す子がいることを知ったのは中2の時だった。

お母さんに頼まれて回覧板を持って行こうと玄関を出たところで、女の子が成の家の玄関前にいるのを見つけて咄嗟にしゃがんだ。
うちと成の家との間には低い木が植えてあるから、相手がこっちを向かない限りは上手く姿を隠してくれる。
女の子は片方の手で小さな手提げ袋を持っていて、もう片方の手で前髪を触っていた。
それが隣のクラスの子だとわかったのは、その子がスカートの皺を直すために横を向いた時だった。
同じクラスの男子が「可愛い」と噂していた子……

少しして、玄関のドアが開く音がすると、女の子の横顔に期待の混じった笑みが浮かんだ。

「今日は学校がお休みで会えなかったから。どうしても東田くんに渡したくて」

「いらない」

成は女の子に見向きもしないで冷たく言い放った。

「……もらってくれるだけでいいの。何も期待とかしてないから」

「いらないし、家にいきなり来られるとか迷惑」

ガチャンと無機質な音がして、女の子の前でドアが閉まった。

女の子はその場で静かに泣き始めた。
やがてその子は手の甲で涙を拭うと、走って行った。