ヘソ天を夢見てる。

「病気を甘く見てた。大学を卒業後……背骨に転移が見つかって……それからは次々と……もう追いつかないくらい。笑っちゃう」

ちっとも笑っているような声じゃない。小さく震える体は今にも消えてしまいそうに見える。
本当に、俺の前から消えようとしている。

「晶……」

「左の胸はニセモノなの」

偽物なんかじゃない。
晶の体の一部になった時から、それは俺にとって本物と変わらない。

「帰るね」

去って行こうとする晶の肩を掴みこちらを向かせると、その目には涙が溢れていた。

「……俺だけが知らなかったのか?」

「だって成にだけは知られたくなかったんだもん」

「男が出来たというのも、結婚するというのも嘘だったんだな……」


俺はバカだ。


「晶……俺のこと好きだろ?」


あきれるくらのバカだ。


「うぬぼれないで」

「そうじゃないなら違うって言えよ。俺は、ずっと好きだった」


こんなはずじゃなかった。
こんなふうに伝えるつもりじゃなかった。


「私は……成のことなんて……」

「子供の頃から晶だけだった。今も変わらない。晶が好きなんだ」

「……そんなこと……言わないで……言わないでよ……私じゃだめなの……もうすぐ……いなくなるんだから……」

ずっと、自分からはふれることができなでいた晶を抱きしめた。

「やだっ……やめてよ……やだ……」

グーで叩かれたけれど、それはあまりにも弱い力だった。

「成にはいっぱいいるじゃん。私じゃなくても……いっぱい……見たんだから……」

晶には他に好きなやつがいると思ったから、それを紛らわせるために適当な女と遊んできた。晶はそれを知っていた。
俺のしてきたことが、晶を傷つけていたなんてこれっぽっちも思わなかった。


約束は……無効になったんだと思い込んでいた。