ヘソ天を夢見てる。

「上手く……隠してたつもりだったのにな……バレちゃったか」

「どうして何も言ってくれなかったんだよ……?」

消え入りそうな小さな声になった。
本人から肯定されてもまだ信じたくないという気持ちの方が勝っている。

「言ったところでどうにもならないから」

「そんなのわからないだろ! 海外のエライ医者に見せたら違う結果があるかもしれない。失敗しない女医だっているかもしれない。高額な治療費を払えば不可能を可能に――」

「成、無理なの」

「いなくなるとか……言うなよ……海外でもどこでも行っていいから……」

晶の指が俺の頬を撫でる。

「……こうなることがわかってたから、言いたくなかったのに」

目の奥が痛むのを力を入れてやり過ごしたつもりが、そうならなかった。流れ落ちる涙を晶は拭うわけでもなくそのまま指でなぞると、穏やかな微笑みを浮かべ、俺を抱きしめるようにそっと自分の胸に押し当てた。

「もうね、どうやっても無理なの」


生まれた時から家が隣同士で、幼稚園も小学校も中学校も高校も……ずっと同じだった。初めて違う道を選択することに躊躇していた俺の背中を、晶が押してくれた。

『自分を信じて! 私は成が絶対に成功するって信じてるよ』

その言葉を力に親を説得し、公務員の父親に言わせれば、将来何の役にも立たない芸大へ進んだ。


「いつから?」

俺はどのくらいの間、何も知らずにいたのか知らなければいけない。
顔を上げると、晶はすっと俺から離れて背を向けた。

「……最初は……大学2年の6月。乳がんで、片方の胸を失った」

それは晶が俺に「彼氏が出来た」と報告してきた頃で……
俺は「良かったじゃん」とだけ返事を返した。

本当はちっともよくはなかった。
言葉にしなくても、晶の隣にいるのこの先も変わらずは俺だけだと思い込んでいた。
自分の知らない男が晶に触れるのかと思うと、嫉妬で心の中がぐちゃぐちゃになって、壊れそうになった。

けれど、晶の幸せを願っていた。その気持ちに嘘はない。
晶は俺の太陽で、決して悲しみで曇ってはいけない存在だった。